SNSが「ファッションショーの常識」を覆した より派手に、よりタイムリーに
ファッションショーはここ数年、より多くの人々の目を引くような演出に力を入れ、ニュースの見出しに取り上げられるように進化してきた。というのも、ショーを観る聴衆のなかのユーザーがモバイルを手にとって、ソーシャルプラットフォームでランウェイの様子をシェアするようになったからだ。
シャネルのテーマ別のショーでは、肘まである手袋とピンクのツイードのコートをまとったモデルたちが、スーパーや空港のターミナルを再現したセットを歩いた。ジバンシィやカニエ・ウェストといった多くのブランドが、これまでのファッションショーのあいだ、一般人対象に席を開放している。トミーピアを開催することになったトミーヒルフィガーは、過去数年に、キャットウォークを数インチの深さの水で浸したり、モデルをフットボールのフィールドで歩かせたりした。
今年のカーニバルで、ヒルフィガーはより多くのソーシャルエンゲージメントを促し、多くの消費者の注目を集めることに成功した。
「もちろん、このような取り組みは大量のインプレッション数を稼ぐ。最終的には、この手のものはプレス向けの派手なイベントになるのだろう。それは、注目されるためにサーカスで輪くぐりをするようなものだ。予算もあり、そうしたことを続けられるのならばすごいことだが、それは稀だ。さらに、実際にそれが売り上げに弾みをつけるかどうかは分からない」と、リヒト氏は語る。
表舞台から身を引くブランドも
すべてのデザイナーたちが、こうした派手なショーで、ライバルを出し抜こうとするゲームに興味をもっているわけではない。
ケイト・スペードは、今年、ファッションショーやプレゼンテーションは開催せず、代わりに予約制でプレスを招待。過去のシーズンでは参加者にセレブリティも招くような、パーティー形式のプレゼンテーションを開催したが、やはりもっとも重要なのはブランドの商品だ。同ブランドのコレクションを観た編集者は、来年2月までソーシャルメディア上で全容を共有することは許されない。その代わりに、ケイト・スペードは、現在販売中の秋コレクションに関するソーシャルプレゼンスに注力していく。
デレクラムも同じ道を選択し、彼のコレクションはプレスとバイヤーだけにクローズドでお披露目される予定だ。デザイナー兼CFDA会長で、2月にインスタグラム向けの秋冬コレクションのパーティーを主催したダイアン・フォン・ファステンバーグでさえ、消費者に目を向けたコレクションのプレミアからは一歩下がって、個人的な問い合わせだけを受け付けている。