シャープ奥田体制、歴史的危機下の1年間

創業101年目へバトンをつないだ

その表情はいつになく晴れやかに見えた。「普段はしゃべりだすと、こうやってしゃべるんだけど、公式の場だと堅い表現になっていたかもしれない」。

就任1年余りで退任が決まった奥田隆司社長。これまでの会見では、資料の棒読みのような味気ない答弁が多かったが、おそらく最後となる今回は、「こういう自由闊達にしゃべれる会社にしてほしい」など、軽やかな受け答えが目立った。

そこには、一歩間違えば会社を潰すことになりかねないというプレッシャーからの解放感があったのかもしれない。

2007年、49歳で社長に就任した片山幹雄会長は「プリンス」と呼ばれ、最低でも10年間はシャープの社長を務めるとみられていた。が、薄型テレビと液晶パネルというシャープの2枚看板事業が急悪化し、12年3月期(11年度)に最終赤字3760億円へ転落した責任を取る形で、代表権のない会長に退いた。

昨年3月時点の奥田社長の役職は常務執行役員。取締役でさえなかった。「いい人だけど社長の器ではないし、11年末時点では本人もまったく想像していなかったはず」(奥田社長と付き合いがある元経営者)。

リーダーシップに疑問の声

「(片山氏と)二人三脚で財務体質改善とビジネスモデルの変革に取り組みたい」。そう語った奥田社長だったが、在任期間中、一番の課題となった資金調達で、主役になれなかった。

というのも、当初、資本増強策の目玉となった鴻海(ホンハイ)精密工業との資本提携は、もともと町田勝彦相談役がまとめたもの。鴻海との交渉が難航し、町田相談役の存在感が後退した後、鴻海の郭台銘董事長と奥田社長のトップ会談は3月まで実現しないまま、シャープ本体への出資は消えた。

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