シャープ奥田体制、歴史的危機下の1年間 創業101年目へバトンをつないだ

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一方、片山会長は米インテルやHPなど海外企業を精力的に回り出資を要請。最終的に、米クアルコムや韓国サムスン電子から出資を引き出した。代表権を持たない片山会長に代わり、クアルコムとの資本提携で契約当事者となったのが代表権を持つ高橋興三副社長だ。

対銀行では、交渉を主導したのは財務担当の大西徹夫専務。取引先や銀行だけではなく、社内からも「誰がトップかわからない」と、奥田社長のリーダーシップに対する疑問の声は強かった。退任への圧力は社内外からあったはずだ。

もっとも「もともと、奥田さんは社長になりたかったわけではない。ストレスも半端ではなく、早く辞めたかったのでは」(シャープ関係者)との声もある。

会見では、片山会長との2頭体制や不仲説に対して「そういう事実はない」と否定したが、続けて「今回、私は会長になるが、代表権も何もない。片山さんもフェローになり、後進の指導に専念する。私自身も経営に対してぐちゃぐちゃ言うつもりはない。今度はすべての権限と責任が高橋に集中するわけで、片山も私もこの形を崩さず運営していきたい。これによって必ずやシャープは新生できる」と語った。

奥田体制で希望退職などを実施し、銀行からの追加融資の条件だった、12年度下期の営業黒字化も達成した。「経営を再建する指揮を執るという、最低限の責任は果たせた」との言葉に、奥田社長の実感がこもっていた。

※関連記事:頼みは銀行とアップル。新生シャープを覆う霧

(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2013年5月25日

週刊東洋経済編集部
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