北朝鮮を突き動かす、国内の“脆弱性” ダニエル・スナイダー氏に聞く(上)

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――韓国での新政権誕生は、北朝鮮に影響を与えているか。

韓国の政治状況の変化は大きな要因だと考えている。

北朝鮮は、まったく身勝手な理由から、韓国で進歩派が政権に復帰することを期待してきた。過去に韓国で進歩派が政権に就いていた10年間、韓国から北朝鮮に向けて、かなりの援助物資が流れた。10年間にわたって韓国が直接援助として北朝鮮に提供した穀物は、1年当たり100万トンを超える。食糧や肥料などだ。この援助が、北朝鮮の経済システムの慢性的な赤字を埋め合わせた。

ところが5年前に李明博政権が誕生すると、この援助は止まり、北朝鮮は深刻な危機に陥った。不足分は、中国が一定の程度まで穴埋めしたが、全部ではない。事態がこのように展開したことで、北朝鮮は以前に増して中国に依存するようになった。これは北朝鮮にとっては面白くない。

北朝鮮は、韓国で進歩派が政権に復帰し、韓国からの援助物資を期待できるという以前のパターンが戻ってくるようにと強く願っていた。しかしそうはならなかった。

たしかに朴槿惠氏は、昨年12月の大統領選挙の前後を通して、北朝鮮との協議を開催し、もう少し前向きな関係を築く用意がある、というシグナルを送ってきた。韓国と北朝鮮との間に政治的信頼を築き、人道的援助を再開することにも言及している。

しかし、多くの面で、基本的には李明博政権を引き継いでいる。朴大統領の側近および政権内、さらには軍部にも、厳しい考え方をする人たちが多く存在する。彼らは、北朝鮮が2010年に引き起こしたような挑発行為に対しては、断固たる姿勢で応じようと固く決意している。

状況は少し鎮静化したが、北朝鮮政府が、韓国政府の決意を試すために、軍事的挑発という形でさらなる手段に出る懸念は、今も否定できない。北朝鮮が何らかの形の緊張拡大パターンを編み出すのではないかと、米国政府関係者は気をもんでいる。

※ 後編に続く

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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