松下幸之助が繰り返した「先憂後楽」の重要性 経営の神様が問わず語りに語ったこと

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そうそう、こないだな、きみも知っておる、ある若手の経営者の人が話にきたんやけどな。その人がえらい熱心に、日本人は働きすぎる。いままではよかったけれど、これからもあんまり働いておると、世界中から批判されるようになるから、これからは、できるだけ遊ぶように心掛けるべきだ。あんたもそうせんとあきませんよ、と言うんや。

それで趣味はなんですか、と聞く。趣味といっても、わしにはこれと言ってないわな。仕方ないから、趣味は仕事ですな。ハハハ。そう答えたんやけど、そうしたらその人が、人間は人生を楽しむために生まれてきたんやから、そしてそのために仕事をやっておるんだから、仕事ばかりということはいけませんと、そんなことを話して帰っていったわ。

まず働くことの大切さを、やはり考えておかんといかん

そういう考え方にも一理あるな。人間として生まれて働きづくめで、というのは確かに寂しいということだわね。けど、だからといって、遊ぶことが大事で、働くことが二の次だということは、これはどんなもんやろうかな。働かずして、なお遊べということを、その人も言っておるわけではないんやろうけど、まず働くことの大切さを、やはり考えておかんといかんな。働くことが先でないと、きみ、遊ぶこともできんやないか。

働いて、そして蓄えて、それで遊ぶと。たしかに日本経済は全体からすれば、他国と比較して豊かになった。けど、それは、戦後国民の人たちが粒々(りゅうりゅう)辛苦(しんく)、働いたからであって、そういうことがなかったら、その人が言う、いま遊ぶことが大事だということも言えんわけや。

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ところがいかにも遊ぶことばかり考えて、知識だけで、努力もせず、汗も流さず、それが今日、求められている方向であるとか、風潮であるとか、まあ、そういう経営者の人でさえ言うのは、好ましいことではないな。いくら遊んだり楽しんだりすることが大事だということはええけど、それ以上に働くことの意義とか大切さとか、そういうことを言わんといかんな。そうしたうえで遊びも大事だというのは必要だと思うが、ただこれからは遊ぶことが大事だとだけいうような、そういう話し方はよくないな。そんなことを言っておると、日本が滅びてしまうわ。

心配なのは、こういうことを、世の指導者の人たちが言うことによって、若い人たちにどんな影響を与えるかということや。世の中、これからは遊ばんといかん、余暇を楽しまんといかん、遊び場所を作らんといかんと大騒ぎしとるようだが、そんな流行に流されて、そう言っておかんと時代の先端をいっておるとは思われんからとか、いまそう言うほうが大勢の人たちから歓迎されるからとか、そういう考え方で、もし経営者たる人が話をしておるとすれば、ほんとうの指導者とは言えんと、わしは思うな。そんなことを、ほんまに自分の会社の人たちに言っておるのかどうか。評論家の先生が言うのはいい。それもひとつの考えやからね。しかしそういうことを言う先生は、あまり世の中のためにはならんな。

働くということは、自分のためでもあるけれど、多くの人のためでもあるわね。自分の働きによって、世の中の発展に貢献しとるわけや。結果的には社会のことを考えているということになる。遊ぶということは、あるいは趣味ということは、自分だけのことやね。自分中心ということになる。たしかに趣味の仲間ができます、あるいは遊びの友だちができますということもあるけど、あくまでもそれは個人的であるわけや。

この世の中、そういうように、みんなが自分中心になっていくとすれば、いったい誰が全体のことを考えるということになるんやろう。それでなくとも今日でさえ、そういう風潮があるわな。その傾向がますます強くなるようなことは言わんほうがええわ。全体を考えるのは、それは政治家が考えればいいということになるのかもしれんが、そういうことで民主主義とは言えんやろ。

遊ぶのが大事だと言うのはええけどな、それと同時に、いやそれ以上に働くことの大切さを説かんといかんわけや。そのうえで、生産性をあげて、効率よく仕事をする、勤務時間を短くして、休みを多くするとか、あるいはその過ごし方を工夫するのはいいけどな、それは働くことの大切さを十分に話したあとや。

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