駅に「ポケモン」が出現!法的問題はあるか 誘客にもなるが歩きスマホ事故の原因にも

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歩きスマホに注意を呼びかける駅の電光掲示板(写真:hamazou/PIXTA)

位置情報ゲームに夢中になればなるほど、触車事故やホームからの転落などに結びつきやすくなる。「歩きスマホ」の危険性に拍車をかけ、他のお客への迷惑を増幅するシステムであるならば、その取消を求める意義は大きい。結果として触車事故や転落事故が起きれば鉄道事業者にも多大な損害が発生するし、鉄道事業者はゲームプレイヤー兼鉄道利用者を含めたお客の安全確保、利便性確保をするべき立場にもある以上、うなずけるところである。

②のホームや線路とは離れた駅舎待合室やコンコースなどはどうであろうか。こちらは触車事故や転落事故の危険は通常は生じない。また、駅舎待合室にしてもコンコースにしても入口で立ち入る者の利用目的をチェックしているわけでもなく、営利目的や犯罪を犯す目的が明白でもない限り鉄道利用者以外でも立ち入ることができる。

しかし、確かに危険性はないとはいえ駅舎は主に鉄道利用者の便益に供するための施設である。鉄道利用者が位置情報ゲームを行うのはともかく、鉄道利用目的のない、位置情報ゲームの目的しかない者を誘引して、駅舎内に立入らせる仕組みを作ることがいいのかどうか、特に鉄道事業者が明確に拒絶の意思を表示していた場合には検討の余地はあろう。

健全な発展へ、さまざまな課題

③の駅前広場については、また別の考え方ができるであろう。鉄道利用者のために設けられたホームや、主に鉄道利用者の便益に供するための駅舎とは異なり、駅前広場は往来に近似する。管理者は鉄道事業者であるとはいえ、ホームや駅舎よりも排他的支配力は弱まる。必ずしも鉄道利用と密接不可分にかかわる場所とはいえず、鉄道事業への影響もより弱まる。

駅前広場の規模や駅との一体性の程度にもよるであろうが、大きな騒乱につながらない限り、拠点の設置や獲物の出現が鉄道事業者の権利侵害や大きな負担にはつながりにくいのではないだろうか。

この問題において念頭に置いておくべきは、鉄道地との関係ではこれら位置情報ゲームが商業利用であることである。運営会社が利益をあげること自体は問題ない。しかし、それが鉄道事業者の安全対策等の負担につながり、また、明確で合理的な拒絶に反しても成立するとしたら、大いに問題があろう。その費用負担をどうするのか、明確に反対の意思表示をしていたのに拠点の設置や獲物の出現が取り消されず事故が起きた場合には誰に責任があるのかという問題も生じかねない。

せっかくの新しいゲームである。鉄道とも融合すれば従来のスタンプラリーとはまた異なる有機的な発展もあるであろう。安全にかつ健全に成長することを望みたい。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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