スマートフォンや位置情報ゲームの普及により、周囲への注意がおろそかになっている人が増えたからか、駅構内で注意を促すポスターや放送が目立つようになった。最近では「危険は地図には表れない」という言葉でホームからの転落の危険を注意するポスターを見かけ、なるほどな、と感心した。
駅のホームは鉄道が内包する危険が最大化される場所である。停車する列車でも高速で駅に進入してくる。ホーム上の人は列車を利用するためにそこにいるから、進入してくる列車から必要以上に遠ざかることはしない。
最近でこそホームドアが設置される駅が増加しているが(国土交通省webサイトによると2016年3月末時点で665駅)、まだホームと列車や線路との間を物理的に遮るものがない駅の方が多く、利用者が何かの拍子に線路へと転落する危険がつねに存在する。人が転落したところに列車が進入したり、転落しないまでも接触すれば大惨事につながりかねない。
ホームからの転落、責任を負うのは誰か
鉄道事業者側からすれば、ホームからの転落の危険をこれだけ注意しているのになぜ落ちる?ということになるであろうし、利用者側からすれば、鉄道事業者は転落防止や転落後の危険発生を防止せよ、ということになろう。転落事故についてどちらが責任を負うべきなのかは実は難しい問題である。
ここで、ホームからの転落事故に関する裁判例を二つ挙げる。安全設備が十分だったか否かが争われたもの(客観的な構造上の問題)と、転落者などの確認が十分だったか否かが争われたもの(主観的な注意義務の問題)、の二つである。
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