いまは「ポケモンGO」がスマホの位置情報を利用したゲームの代表格になっているが、いずれ類似のゲームは色々と登場するのかもしれない。そこで以下、「ポケモンGO」を「位置情報ゲーム」、「ポケストップ」などは「拠点」、「ポケモン」は「獲物」として、一般論として鉄道においても問題はないか見てみたい。ただし、事案の集積はまだ少なく、完全な私見であること、特定の者の責任を処断するものでもないことをお断りしておく。
まずはその危険性である。獲物探しに夢中になって周りが見えなくなった場合、対列車との関係でいえば、触車事故、ホームからの転落事故、対ほかの利用客との関係でいえば、通行人同士の接触事故の危険があり得る。
最近の駅ではホームドア設置工事が少しずつ進んでいる。ホームドア設置が全駅で完了すれば触車事故やホームからの転落事故は激減するであろうが、いまはその過渡期である。ホームが危険であることは疑いがない。ホーム上で拠点や獲物が現れるようにして、それが原因で事故が起きたとき、その責任の所在が問題になろう。
確かに、位置情報ゲームを始めるとき、「危険なところでは遊ぶな」という表示がスマホに現れる。移動速度が速いと感知したときには制限がかかり、自動車を運転していない場合には運転者でない旨を確認するボタンもある。一応、安全確保の配慮がされてはいる。
しかし、その表示があるからといって、そもそも危険な場所から危険が除去されるわけでない。プレイヤーの個別的な事情で危険な目に遭ったという場合はともかく、位置情報ゲームをするには類型的に危険と判断される場所もあろう。駅のホームなどはその典型である。そのような場所でいかに位置情報ゲームをすることが危険であると訴えてもそれで十分とはいえない。駅のホームなど当然に危険性を帯びる場所では、そもそも獲物を出現させないとか、出現させるのであれば鉄道事業者等の安全管理責任者などとの調整が必要であろう。
ポケモンが線路に出たら不法立入?
次に、公道上や公園などはともかく、鉄道事業者が管理する場所で、鉄道事業者の関与がないままに人が集まる仕組みを作り上げることに、管理権の点で問題はないのであろうか。
たとえば、①鉄道地内に入らなくても捕らえられる獲物が鉄道地内にいる場合、②鉄道地内に入らないと捕らえられない獲物が鉄道地内にいる場合などに鉄道事業者の管理権との関係で問題がないかということである。
①②のいずれにしても、物理的に運営会社が鉄道地内に進入して拠点を設置したり獲物を出現させたりしているわけではない。鉄道地内にスマホを通じて電子的に拠点を設置したり獲物を出現させたりする仕組みを作っても、それが不法な立入になるわけではない。
一方、②の場合には利用者を鉄道地内に進入させることになる。鉄道地内に利用者を鉄道地へ進入させることは、利用者に許諾を得ない鉄道地内への違法な立入をさせる可能性にもつながりかねない。
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