株価上昇の裏で進む「日本売り」のシナリオ 国債価格の乱高下で明らかになった、危険な兆候

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ただし、名目金利の上昇は、期待インフレ率の上昇の結果とは限らない。名目金利と期待インフレ率とは表裏であり、金融市場が金融緩和により資金があふれても、実体経済に直接働きかける効果は、現在は極めて小さいと考えられるから、金融市場の中だけでマネーがあふれる可能性がある。そのときに、名目金利が上がって、期待インフレ率ではなく、実質金利が上がる可能性がある。

これは、経済理論上は出てこない。なぜなら、実質金利は、実体経済における決定変数であり、金融市場によっては動かないものであるからだ。しかし、現実には、国債がリスクレスアセットで、ベンチマークとする以外に、理論と整合的な議論は出来ないので、実質金利プラスインフレ率が国債金利と考えられてしまう。

しかし、本当は、名目金利、すなわち、国債金利(すなわち国債価格の裏返し)がベンチマークになってはいるが、国債は国債で個別の金融商品であって、個別のリスクがある。このリスクを反映して価格が変化した場合には、国債金利が経済、金融市場のベンチマークという認識が広まっているから、ベンチマークが変わると思われているが、実際にはそうではないのが問題なのだ。

これが欧州危機で明らかになったことである。

名目金利が上昇した理由が、国債のリスクが高まり、リスクプレミアムが上昇したことである可能性があり、それが問題となる。そのときに、株価が勢いよく上昇しているのは、このストーリーを打ち消す事実として解釈することが可能であり、多くの市場関係者はそれを望む。

ただし、可能性としては、株価は、それ自体として、バブルとして勢いがついたために、皆が買う、買うから上がる、だからさらに皆が買う、という典型的なバブルの流れが加速している、ということもあり得る。実際、5月15日には、米国市場好調の流れを受けて、日経平均は大幅高、1万5000円台を回復したが、マザーズなどの新興市場の下落は激しく、バブルによる乱高下が起きていると解釈するのが自然な状態である。

もうひとつの債券価格の大幅下落を気にしなくて良いストーリーは、株式へ資金が集まり、その流れを受けて、債券の投資家も債券から株に資金をシフトさせており、その結果として債券が下落しているというものだ。

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