長期投資に向いた投信を選ぶのは、実は簡単だ−−澤上篤人 さわかみ投信代表取締役
星の数ほどもある投資信託の中から、どうしたら長期投資に適した投信が選べるのか。評価会社の評価や過去の運用成績は投信選びに役立つのか。さわかみ投信の澤上篤人氏に聞いた。
--個人投資家が長期の資産形成を行うにあたっては、直接、株式を買う方法と、プロのファンドマネージャーに運用を託す、つまり投資信託を保有する方法の2種類があります。投資信託を用いて長期投資を実践する場合、どのようなことに注意すればいいでしょうか。
投資信託の使い方は大まかに言って2つに分けられます。1つは、好きな株を買うのと同じ感覚で、投資ポートフォリオを組み立てる一環としての使い方です。昨年のインド株や中国株のブームに乗った投資はこれにあたります。タイミングを計って、ファンドを選択し、投資するという方法ですね。
もう1つは、われわれが提案している長期投資をするために投信を使うという方法です。わかりやすく言うと、投信を使って自分で金銭的な自立を図る、自分の年金を作るということです。投信を長期的にずっと積み立てていく、またおカネに余裕ができたときには、どんどん投信に放り込んでいく。そして、現役を引退して収入がなくなったら、それを少しずつ取り崩して使っていくことになります。
この後者、長期保有型の投信においては、投資家とわれわれ運用会社との関係は、信頼感、安心感で成り立っています。運用するわれわれの側は、長期的な財産づくりのお役に立てるよう、どっしりとした本格的な運用をやっていく。景気のうねりを先手、先手でとらえて、世界の成長を取り込んでいく運用です。誰もが尻込みしたくなる弱気相場のときに、これはと思う企業の株を買い、高くなってきたら少しずつ売る。この繰り返しをリズムよく行っていくうちに、資産は成長していくものです。そうなると、投資家の側としては、後はお任せでよいことになります。
--世の中に投信は約3000本もあります。星の数ほどもあるファンドの中から、どうしたら長期投資に適した投信を選べるのでしょうか。
長期投資に向いた投信を選ぶのは、実は簡単です。投信を手数料稼ぎのためのビジネスとしてとらえ、販売しようという意識が透けて見えるような投信は、長期投資には向いているとは言えません。投資家が買うまではいろいろ説明したりしてくれますが、買った瞬間に販売側としては「目的達成」となるわけです。
これに対して、長期保有型の投信は、むしろ大事なのは買って頂いた後と考えます。投資家にとっては買った瞬間から「長い旅」が始まるわけですから。長い人生の間には何が起こるか分かりません。でも、それを恐れずに本格的な長期運用でいっしょに頑張っていく。長期保有型の投信からは、こういった強い「理念」、「方向性」、「哲学」を示すメッセージが月次報告書などの形でどんどん届きます。
--相手側が売ろうとしているかどうか、買った後にメッセージが届くかどうかが見分けるポイントになるわけですね。
投資信託は1万円から買えるのですから、5万円なり10万円を用意して、これはと思った投信を買ってみたらどうでしょう。その中で、「長期の財産づくりに頑張りましょう」といった"思い"を届けてくるファンドか、形式的な説明しか送ってこないファンドか見分けがつきますね。要は、しばらく付き合ってみて、あわないなと思ったら、売ってしまえばいいのです。