長期投資に向いた投信を選ぶのは、実は簡単だ−−澤上篤人 さわかみ投信代表取締役
直販でやっているファンドと、銀行や証券会社、郵便局など窓口で販売しているファンドをいくつか組み合わせて買ってみればいいでしょう。最近は販売手数料を取らない、ノーロード型の投信も出てきましたが、販売会社は手数料で生計を立てているわけですから、信託報酬や解約手数料などでいろいろ稼ぐ工夫をしています。投資家と運用者の間に販売会社が入ると、自ずとコストは高くなりがちですね。
一方、直販では、販売しよう、手数料で稼ごうとはしません。まずはお客様の財産づくりのお手伝いを長期でさせてもらいたい。そのためには無駄なコストを削ぎ落として、お客様と一緒に二人三脚で資産を大きくしたいと考えるから、直販の形になるのです。
この4月に、「浪花おふくろ投信」、「楽知ん投信」、「かいたく投信」の3つの「おらが町投信」が直販グループとしてスタートしましたが、皆、小さく(小さい資金から)始まりました。それでも関係なく経費は出て行くのですから、ビジネスとして見れば大変です。これが商売優先のファンドであれば、一刻も早く採算が合うところまで残高を積み上げようとします。ただ、われわれ直販グループは、そういったことを行いません。お客様の「安心しておカネを任せたい」というニーズに応えるために真面目に運用を行ない、結果として実績が積み上がり、採算がとれるようになればと思っているのです。
--理念や哲学が大事ということですが、理念や哲学は運用成績にはどのように現れてくるのでしょうか。過去の運用成績や評価機関の評価は、ファンド選びにおいてどう参考にすればよいのでしょうか。
理念は投資家が"感じる"ものです。だから時間がたたないとわからない、信じられないという人もいるでしょう。さわかみファンドの場合、「さわかみファンドの長期運用にはブレがない」ということを9年かけて実績で示してきました。でも、ありがとう投信はまだ3年半、セゾン投信は1年。おらが町投信はまだ出来たばかりです。哲学をわかってもらう、本当に投資家に信じてもらうためには非常に長い時間がかかることもあるのです。でも、付き合っているうちにだんだん本物かどうかわかるでしょう。
評価会社は、ある一定の期間の成績に基づいて、ファンドを評価しています。そうなると、販売を優先しているファンドの場合、評価機関からの評価を意識するあまり、半年、1年、3年といった一定期間にそこそこの成績を上げることを重視するようになります。
ところが長期保有型の投信は、頑張って成績を上げようとは考えません。成績はやることをやっていれば結果として後からついてくると考えるからです。長期的に見てここが大きな仕込み場だと思えば、場合によっては1年、2年といった目先の成績を捨ててでも、思い切って買い増すのです。われわれは評価会社の評価をまったく気にしません。長期投資のスタンスにブレないことが大事なのです。
長期の運用を行うと言っている以上、目先の成績にとらわれて長期的な成長のための布石を打っていないならば、それはお客様にとって「誠実な運用」とは言えません。こういった「不誠実さ」は、理念や哲学といった形で、いずれ明らかになるものです。長期的な観点から仕込んだものの成果が出てくれば、その時には、われわれの成績は一気に表面化することとなります。
(聞き手 水落隆博 撮影:梅谷秀司)
澤上 篤人 さわかみ・あつと
1947年、名古屋市生まれ。70年から74年までスイス・キャピタル・インターナショナルでアナリスト兼ファンドアドバイザー。73年、ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。80年から96年までピクテ・ジャパン代表を務める。96年、さわかみ投資顧問を設立。99年に日本初の独立系投資信託会社、さわかみ投信を設立。
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