コロンビア内戦、和平合意が否決された理由 国民投票で想定外の結果に
しかし、その他の多くの人々にとって、和平合意が失敗に終わったのは、感情的な理由によるところが大きい。合意はつねに、平和と正義の間で綱引き状態にあり、最終的には正義を求める声が勝利したのである。
ある意味サントス大統領は、国が反乱軍抑制に一定の成果を上げてきたことの「犠牲者」になったといえるだろう。彼は大統領になる前に国防相を務め、FARCを国のすみずみまで追いかけた。襲撃はついにエクアドルにまで及び、2008年には現地でFARCの指導者を殺害した。こうした一連の軍事行動は、反乱軍を交渉の机につかせる圧力となった。
なぜ政府は「寝返った」のか
今、多くのコロンビア人が疑問を感じているのは、政府がなぜここまでした揚げ句に「寝返った」のかである。和平協定には、多くの地位の低いFARC戦闘員を解放するだけでなく、戦争犯罪に関与していた戦闘員の減刑まで含まれているのだ。
政府の交渉担当者は、反乱軍は厳しい条件を受け入れられず、交渉の席から離れるだろうと何度も主張していた。会談はキューバ・ハバナで4年間にも及んだ。FARCの指導者たちの減刑あるいは釈放を認める暫定的な法律改正についてでさえ、合意するのに18カ月も要した。
サントス大統領の交渉責任者、ウンベルト・デ・ラ・カジェは国民投票の前のインタビューで、多くの和平協定反対者が求めているFARC戦闘員の服役を、協定に含めることは不可能だろうと語っていた。「正直それは最悪のオプションだ。FARCが『オーケー、服役を受け入れる』 と言うとは思えない。冗談にもほどがある」。
中南米・カリブ地域の人権問題などに取り組むNPO「ラテンアメリカのワシントン事務所」のアナリスト、アダム・アイザックソンによると、反乱軍も和平のために自らの土地を手放し、経済改革を認めるという譲歩の姿勢を見せた。また、民兵組織に襲われる危険があるにもかかわらず、6カ月で武器を放棄するというスケジュールにも合意していたという。「FARCからすると、協定によって多くの土地を手放さなければならなかった」とアイザックソンは言う。