赤福と石屋製菓 これだけの共通項

前代未聞の食品偽装 経営トップは地元名士

 典保社長の実父で30年以上にわたり経営トップに君臨し続ける濱田益嗣会長は、拡大路線をひた走った実力者で知られる。それまで地場の土産物でしかなかった赤福餅の販路を、名古屋、関西方面の駅売店やサービスエリアなどに広げた。テレビCMも積極的に打ち、知名度は一気に向上した。地方経済が疲弊する中でも2006年9月期の売上高は84億円と、3年前に比べて8%の増収を達成。純利益は11・8億円と、食品企業としては驚異的な利益率を誇る。無借金で財務体質も強固だ。

 濱田会長は地元の名士でもある。伊勢商工会議所会頭など公職や三重テレビ放送の取締役も務めた。もちろん地元への影響力は絶大だ。42店舗もの土産物店や飲食店が集まる「おかげ横丁」の建設にも、中心的役割を果たした。総事業費140億円というこの大規模プロジェクトを1993年に完成させたことで、それまで人通りが少なかった赤福本店前を観光地化することに成功した。

 一方の石屋製菓もまた、典型的な同族経営だった。偽装問題発覚時は取締役5人のうち4人を創業家で占め、株式も一族がそのほとんどを掌握していたようだ。白い恋人が売上高の8割を占め、業績を牽引してきた。07年4月期の売上高は72億円で、純利益は11・2億円にも上る。赤福に負けず劣らず収益性は高い。社内で絶対的存在だったと言われる石水前社長も赤福の濱田会長と同様に、対外活動に熱心だった。札幌商工会議所副会頭や札幌観光協会副会長などを務めたほか、ある経営者によれば「Jリーグのコンサドーレ札幌の支援にも積極的だった」という。

同族経営の功罪 トップの姿勢は対照的

 赤福と石屋製菓はこれまで、経営において長期的な視点で迅速な意思決定を下せるという、同族経営の長所が生かされてきたといえる。人気ブランドに経営資源を集中する「一本足経営」を貫き、生産効率化を追求して高収益体質を築き上げた。

 しかし、同族経営はトップに情報が伝わりにくく、風通しの悪い社風を招きやすいデメリットがある。今回の偽装問題はどちらも、内部告発によって発覚したものだ。「できませんでした」--。会見の席上、赤福の森田利博工場長はうなだれるだけだった。直近まで偽装を現場に指示していたことを、どうしても創業家に伝えられなかったという。

 両社ともに、企業倫理や食品安全意識が欠如していた。外部のチェック機能が働きにくい同族経営の弊害だといえる。トップが対外活動に積極的で経営に目を光らせる時間が削られたことも、ずさんな管理体制を放置し続けた背景にあるだろう。

 とはいえ、両社には違いもある。石屋製菓は不祥事発覚後、すぐに外部から新社長を迎え経営刷新に乗り出した。対照的に赤福の濱田社長は現在のところ、辞意を表明せず「再建に全力を尽くす」と語るだけだ。一族のカラーが染みついた経営体質を、濱田社長は刷新することができるのか。同社はまだ、偽装の常態化を招いた根本的な原因を明らかにできていない。「誰が、いつ、現場に偽装の指示を出したのか」--。そのカギを握る濱田会長は依然、公の場に姿を見せることさえない。

(書き手:梅咲恵司)

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