赤福と石屋製菓 これだけの共通項
地場の優良企業として知られる老舗菓子メーカーが、偽装問題で揺れている。その背景に横たわる共通の経営体質とは--。(『週刊東洋経済』11月10日号より)
老舗菓子メーカーによる食品偽装問題が後を絶たない。
名菓「赤福餅」を製造する赤福(三重県伊勢市)が、製造日を書き換えるなどの偽装を長年にわたり繰り返していたことが、世間の批判を浴びている。今年8月には同じく「白い恋人」を製造する石屋製菓(札幌市)で賞味期限の改ざんが発覚したばかり。石水勲社長は辞任に追い込まれた。
ともに全国的な知名度を誇る地場の優良企業。一連の問題を通して浮かび上がってくるのは、両社に共通するあしき経営体質である。
赤福が長年続けてきた偽装は、一つのシステムとでも呼ぶべき、組織的かつ巧妙なものだった。
店頭で売れ残った商品を再び工場に戻し、製造日を書き換えて再出荷。偽装したものかどうかを担当者が見分けやすくするため、製造日のあとに「‐」(ハイフン)や「・」(ピリオド)などの記号を刻印して暗号化。さらに、「むきあん」「むきもち」と称して、回収した商品をあんともちに分離し、それを赤福餅などに再利用していた。その中には、賞味期限切れのものも含まれていた。
「売れ残った商品を回収して再利用するなんて、聞いたことがない」と、農林水産省表示・規格課の職員はあきれ返る。農水省は日本農林規格(JAS)法に違反しているとして、表示の是正措置を指示。また、三重県は食品衛生法に違反しているとして10月19日付で、同社を無期限の営業停止処分にした。
「私が指示したことは、ございません」。同22日に行われた会見で、赤福の濱田典保社長は不正について関与を強く否定した。が、経営陣は少なくとも現場の不正を黙認していた疑いが強い。濱田社長は、あんともちを再利用していたことを「(3年前の)専務就任時に把握していた」と打ち明けた。中村勇専務も繁忙期における製造日の書き換えが直近まで行われていたことを知っていた。
赤福餅が売上高のほとんどを占める同社は1707年(宝永4年)の創業以来、濱田家による同族経営を貫いてきた。株式のほぼすべてを、一族が握っているとみられる。