三菱重のMRJと海外のライバルを徹底比較 老舗2社との勝負が成功を左右

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新世代エンジン搭載し 経済性などで優位性

さらに、ここで機種名を挙げたMRJを含む5機種は、別の分け方もできる。大きな意味を持つ胴体の太さの違いだ。細いのはMRJ、CRJ、Eジェットの3機種で、普通席の客室は通路を挟んで左右2席の計横4席。

一方、SSJ―100とARJ21は胴体が太く、客席は2席+3席の横5席。胴体が太ければ座席幅などがゆったりしそうだが、席数自体が増えているのでまったくといっていいほど違いはない。胴体が太い分、飛行中の抵抗が増加し、運航効率は低下してしまう。

こうした理由から、三菱航空機は、同じ新規参入組であってもほかの2機種は同級のライバルではない、と見ている。すなわち真のライバルを老舗組の機種に定めているということになるが、これは当然のことでもある。実用化で先行し、地域旅客機市場をリードしているエンブラエル、ボンバルディアのシェアを奪っていかないかぎり、MRJの成功はおぼつかないのであり、それを実現できるかどうかがMRJの今後の大きなカギになる。

MRJは老舗組の機種よりも10年近く後に開発をスタートしたため、より新しい技術を採用することが可能となった。たとえば、新世代エンジンの使用は低燃費、低騒音、低排気物質といったメリットをそのまま享受でき、経済性に優れるとともに環境に優しい旅客機に仕上げることを可能にしている。MRJが装備する米国プラット&ホイットニー社製のエンジン、「ピュアパワーPW1200G」は、ギアを使ってエンジンの最前部にあるファンだけ回転数を落とすことによって、より燃料消費を減らすという、新しい技術を使用したものだ。

燃料消費が少なければ当然航続距離は延び、MRJはMRJ70が3380キロメートル、MRJ90が3310キロメートルという航続距離性能を有する(ともに長距離型)。これは北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各地域でその全域をほぼカバーできる能力であり、地域ジェット旅客機として十分なものである。

さらに、先進の設計技術も抵抗を大きく減らすなど運航効率を向上させるので、MRJは従来機に比べて経済性を20%程度向上させることが可能になる、と三菱航空機では説明している。もちろん新しい旅客機の設計・製造技術は、安全性向上にも大きく寄与する。

こうした安全性や経済性は確かに重要な要素であるが、一般の利用者が直接旅客機とかかわりを持つのは座席回りであり、MRJはこの点においてもライバル機に差をつけるための設計や技術を取り入れている。

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