三菱重工の小型旅客機、年内の離陸は困難に 初飛行また延期で暗雲。新たな受注獲得も遠のく

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三菱重工業が社運を懸けて開発を進める90席クラスの小型ジェット旅客機、MRJ(三菱リージョナルジェット)の先行きに暗雲が垂れ込めてきた。年内に飛行試験を開始する予定だったが、肝心の実機の準備が遅れており、初飛行は来年春以降となりそう。2015年度中を目指していた納入開始も16年度以降にずれ込む可能性が高い。

MRJは、1960年代にオールジャパンで開発された「YS-11」(72年に生産終了)以来となる国産旅客機プロジェクトだ。三菱重工は08年に三菱航空機を設立し、開発を正式にスタート。投資額は開発費だけで2000億円近くに上る。

100席以下の小型旅客機は、ブラジルのエンブラエルとカナダのボンバルディアが市場を寡占。さらに軍用機で有名なロシアのスホーイが11年から納入を開始し、中国企業も開発を進めている。三菱重工はいちばん最後に名乗りを上げた分、最新の空力設計技術を駆使。さらに、米国プラット&ホイットニー(P&W)が開発した最新鋭エンジンを採用し、他社より2割近く優れた燃費性能をうたっている。

しかし、予定していた年内の離陸は難しくなってきた。飛行試験用の初号機はまだ主翼や胴体など各構造部位の組み立て段階にあり、エンジンなど主要装備品の準備も遅れが出ている。「納入開始時期も含め、現在、スケジュールの見直しを検討中」(三菱航空機)。延期になれば今回で3度目。08年に開発着手した当初、初飛行は11年、納入開始は13年の予定だった。

「旅客機の開発はとんでもなく大変な作業だ」。三菱航空機の川井昭陽社長は、以前からこう口にしてきた。旅客機は高い安全性が要求されるうえ、100席以下の小型機でも総部品点数が100万近くに上り、全体を取りまとめる開発メーカーの作業量は膨大だ。しかも三菱重工は新規参入組。戦闘機やヘリなどの実績はあるが、勝手が違う旅客機では悪戦苦闘を強いられている。

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