Spotifyは日本の音楽市場を変えられるか 世界ナンバーワン配信サービスの行方は?

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日本の音楽産業基盤を支えている芸能シーンはかなり独特。この壁を破ることはできるだろうか

そうした懸念から「音楽パブリッシャー全体(たとえばソニーミュージック)の方針で無料も含めた配信に賛同している場合、頒布権が委託されていると自動的にSpotifyでも配信されるが、独自に権利を保留している事務所やアーティストは配信に同意していないところが多い。”どことどこ”とは指摘はしないが、現実的には無料配信に対する抵抗感は根強い」とも指摘した。

不信感の根っこにあるのは、どんなにアーティストに寄り添う姿勢をSpotifyが見せたとしても、ビジネスモデルそのものが”たくさんのアーティストを抱えるレーベル”と配信にかかわる企業の間での合意に基づくものでしかなく、本来、音楽を生み出しているアーティスト中心ではないからとも話した。

もちろん、単独アーティストとして音楽ストリーミング市場全体に影響を与えるだけの力を持った著名アーティストもいるだろう。しかし、大多数のアーティストはそうではない。アーティストの創作活動を支えるエコシステムを壊すものになるのでは、という懸念は払拭できていない。

Spotifyは後発の不利を吹き飛ばせるか

そのうえで、加入型サービス市場に後追い参入する不利も、当然ながら存在する。

たとえば配信開始から1年が経過したNetflixは、先行していた日本における有料配信ナンバーワンのhulu、あるいはNTTドコモのdビデオといったトップ2サービスはおろか、後発のアマゾンよりも契約者が少ない。コンテンツやサービスの質で言えば、Netflixは非常に充実しているが、日本では加入者基盤を持たないためだ。

huluは海外系サービスとしてはもっとも早く始まったサービスのうえ、タイミング的に民放各社が協力をしはじめた頃、日本テレビが買収して日本での認知が定着した。NTTドコモには、言うまでもなく大きな契約者基盤と決済と直結されたユーザーがいる。これはアマゾンも同じで、アマゾンプライムを加入者基盤として活用できる。

Netflixは米国ではレンタルDVD網という加入者基盤を活かしてサービスを拡げ、さらにサービスの品質を高めることに成功。その高品質をもってサービスインしたにもかかわらずの苦戦である。

Spotifyの場合、後発の不利をカバーする無料サービスモデルとPlayStation Music連動という二つの武器を持っているが、はたしてそれが音楽ストリーミングサービスが定着しない日本の音楽産業を変えるきっかけになるのだろうか?

AKB、ジャニーズ、LDH。日本の音楽産業基盤を支えている芸能シーンは、グローバルにおける音楽カルチャーを中心とした音楽シーンとはかなり質が異なる。Spotifyが優れたサービスを展開していることは確かだが、まだまだこの先に越えなければならない壁は高い。

(撮影:風間仁一郎)

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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