Spotifyは日本の音楽市場を変えられるか 世界ナンバーワン配信サービスの行方は?

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たとえば、海外でも人気のロックバンド「ONE OK ROCK」が渚園で開催したライブ後、演奏されたセットリストをSpotifyがまとめてプレイリストとしてグローバルに配信。それをバンドの公式SNSが通知したり、リオ・オリンピック関連の音楽・アーティストとして東京スカパラダイスオーケストラをSpotifyが紹介したことで、ブラジルの音楽チャート3位に入るなどの実績がある。

その結果、他サービスではストリーミング配信されていない邦楽曲も、Spotifyで配信されている例もある――。これがSpotifyの説明だ。「邦楽曲の配信数は、実はSpotifyが一番多い」というのだ。公式な数字としては4000万曲という総数しか発表されていないが、その中身には自信があるということだ。

ただし、後述するが、こうしたSpotifyの主張には異論もある。

誰のための無料配信なのか?

Spotifyの主張を聞くかぎり、そしてそのサービス品質を体験するかぎり、順風満帆に思えるが、日本への導入は困難な面もついて回る。なぜなら、日本市場においてSpotifyは後発だからだ。彼らが主張する”広告の出し方による違い”を除くと、機能面での優位性は、この4年間でかなりそがれてきている。何らかのかたちで、同じような機能はライバルも導入している。

確かにSpotifyは過去に数多くのライバルサービスに対しても優位にビジネスを拡大してきている。Apple MusicはiOSデバイスとiTunesのみしかサポートしないという制約があるとはいえ、あのアップルがデバイスにタイトに統合しながらも1700万人の会員数。Spotifyの強さがわかろうというものだ。

しかし、Spotifyが音楽ストリーミングのジャンルでトップランナーたり得たのは、この分野におけるパイオニアだったためだ。Apple MusicもTIDALも、グローバルで話題になっている音楽ストリーミングサービスを体験してみると、その機能や音楽を楽しませるためのエッセンスの源流をたどるとSpotifyにぶち当たる(もちろん、Spotify以前からあったカスタマイズ・ラジオ・ストリーミング・サービスなどもあるのだが)。彼らが画期的だったのは、ラジオ的なものと所有する音楽ライブラリの両方の良さを組み合わせ、定額であらゆる音楽にアクセスできるようにし、仲間内で勧めあえるコミュニティを創りだしたことだ。

かつてNapsterが目指した世界を、合法的に、よりスマートかつエレガントに実現してみせた。その先進性や、先行した事による対応製品の多さ、それにソニーとのPlayStation Musicに代表される他社との提携などを見れば、先行者としての優位性はあきらかだ。

しかし、日本市場はSpotifyの参入(すなわちフリーミアムモデル)を拒んだまま、各レーベルによるトライアルが進んできた。ソニーミュージックが主体的に取り組んだLINEとの提携や、エイベックス主体のAWAなどは、そのもっとも典型的な例だろう。だがいずれも音楽市場に変革をもたらすほどのインパクトは与えられず、現在に至っている。

Spotifyがこのタイミングで参入できた背景には、LINE MusicやAWAといった既存サービスによる音楽産業改革が、思ったように進んでいないことを意味している。iPhoneの販売比率が高い日本では、Apple Musicが伸びる可能性もあるが、あるソニー系の音楽レーベルプロデューサーは「そもそも、日本ではストリーミングにおカネを払うカルチャーが定着しておらず、ストリーミング配信でCD売上げの低下を補う戦略は成り立たないのでは」と指摘した。

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