「だし」の取り方と活用法を知っていますか 「和食に使うもの」は単なる固定観念だ

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利きだしの結果、一番の好みが真昆布だった。しっかりと濃い、コクのあるだしが出るからだ。この利きだし実験以降、「佐吉屋」の真昆布はわが家に欠かせないストック食材となっている。ちなみにメジャーな日高産は、真昆布に比べるともっともだしの出具合がわかりにくかった。

イチ押し料理は、だし汁に薄口醤油を数滴入れて卵を溶くだけの「かきたま汁」。シンプルにして真昆布だしのうまみが一番よくわかる。このだしは、和食に限らず、あらゆるジャンルの料理のベースにも使えるので、わが家ではミネストローネやコーンスープなども、昆布だしで作る。いかにも「和」っぽくなるわけではなく、「うまみがアップする」という感じ。しみじみとおいしい。激しい主張をせず、どんな食材ともうまく調和するのが昆布だしのいいところだ。

かつおだしはコーヒードリッパーで

次は、かつおだし。こちらはコーヒードリッパーでだしをとるのが梅津流。産地は問わない。ドリッパーにフィルターをセットし、かつお節をバサッと入れて、熱湯をチョロチョロと注ぐだけ。目安としては、かつお節5gに水180cc程度。濃ければお湯で薄めればいい。分量はあまり気にしない。一般的な1つ穴3つ穴のドリッパーでもだしはとれるが、一番のオススメは「CLEVER」社のドリッパー。フタをして蒸らすことができるので、よりしっかりと濃いだしがとれる。ひとり分のみそ汁や、だし巻き卵を作るときに便利だ。

よく、「だしをとってもみそ汁くらいにしか使わない」という声を聞くが、なんともったいない。昆布だし同様、かつおだしも和食以外に幅広く使えるのだ。

最近のお気に入りは「だしカレー」。イメージは蕎麦屋のそれだ。いつものカレーを、濃いめのかつおだしで煮込むだけ。市販のルーでも十分。かつおだしで煮込むだけで、蕎麦屋のカレーになる。だしのうまみが感じられる、驚きのおいしさ。ぜひ試してみてほしい。

「それでもだしをとるのが面倒」という人には、京都の人気イタリアン「イル・ギオットーネ」の笹島保弘シェフに教わった「かつお節入りトマトソースのパスタ」をおすすめしたい。トマトソースは、自家製でも市販のものでもOK。仕上げに、おひたしや冷奴に使う小分けパックのかつお節を投入するだけ。ソースに混ざってかつお節の食感は気にならなくなるので、1人前に1〜2袋が目安。パルメザンチーズをかけると、かつお節のうまみとトマトのうまみにチーズのうまみも合わさって、まさに“うまみの宝石箱”状態に。さらに。麺を昆布といっしょにゆでれば、うまみの相乗効果は最大級となる。

日本が誇るだし文化。「和食に使うもの」という固定観念にとらわれず、もっと自由な発想で、日々の食卓で楽しんでみてはいかがだろうか。「かつお節なんて、何に入れてもまずくなるわけがなく、うまくなるだけなんだから」と笹島シェフに言われてから、わたしは「うまみのふりかけ」のごとく、いろんな料理にかつお節をふりかけて楽しんでいる。

梅津有希子

北海道生まれ。雑誌編集者を経て2005年に独立。食、ペット、暮らし、趣味をテーマに雑誌やウェブに寄稿。講演活動も行っている。著書は『終電ごはん』(共著・幻冬舎)をはじめ、『吾輩は看板猫である』シリーズ(文藝春秋)など。近著に『だし生活、はじめました。』(祥伝社)、『高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究』(文藝春秋)がある。

(文: Yukiko Umetsu、イラスト:Naoki Shoji(portraits))

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