知らないと損!使える5つの「経営学用語」 「イノベーターのジレンマ」を説明できますか

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これが20世紀末に『イノベーションのジレンマ』(クリステンセン、1997年)で「イノベーターのジレンマ」と呼ばれた現象です。

比較的近年のもので有名なのが、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)業界のケースです。その市場では 14インチ→8インチ→5.25インチ→3.5インチとハードディスクが小さくなるたびに、 リーダー企業が入れ替わってきました。

HDD市場では、性能的には劣ったオモチャのような製品が、既存市場ではなく、別の大きな市場を獲得して売れてしまうのです。たとえば、14インチがメインフレーム・コンピュータを市場としていたのに対して、8インチはミニコンピュータの市場を、5.25インチはデスクトップPCの市場を、さらに3.5インチはポータブルPCの市場を獲得し、爆発的に売れました。

リーダー企業は、従来品の高性能化と低価格化を求める主要顧客の要望に沿う形で、次世代規格の技術開発に邁進し、成功していました。それにもかかわらず、結局、市場を獲得、席巻したのは、新興企業の製品だったのです。こうした現象を、イノベーターのジレンマと言うわけです。

市場で独占・寡占が進むと…

②ファイブ・フォース・モデル

経営戦略論では、普通以上に得られる利益率のことを「レント」といいます。レントはもともと地代のことですが、地主が土地を持っているだけで、働かなくても入ってくる不労所得のようなイメージから転じた言葉です。

経済学ではレントの源泉は市場です。アメリカの経営学者であるポーターも、市場での独占・寡占による「独占のレント」から発想した戦略モデルを展開しました。

その戦略モデルとは、市場で独占・寡占が進むと、それを製造する独占企業は生産量を減らして品薄状態を作り出し、意図的に価格を吊り上げることで利益を上げることができる、というものです。

この独占のレントを脅かす新たな敵対関係を、①新規参入者の脅威、②代替製品の脅威、③顧客の交渉力、④供給業者の交渉力、⑤ 競争業者間の敵対関係、の5つの力で表現したのが「ファイブ・ フォース・モデル」です。

ところで、独占企業が製品価格を吊り上げてまんまと大きな利益を出す……ということに抵抗を感じるのは私だけでしょうか。しかし幸いにも、現実はそうはならないようです。

アメリカの経済学者デムセッツは、一見すると独占のレントが発生しているように見えていたデータを注意深く分析すると、実は因果関係が逆だと指摘しました。つまり、高効率の企業が低価格で市場シェアを伸ばしたことで、独占・寡占が進んでいたことを明らかにしたのです。

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