「ドラゴンボール」を欧州に広めた男 日本アニメ輸出の第一人者、アニマックス滝山社長に聞く

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――ただ、日本のテレビ番組の海外輸出比率は0.15%(2011年)で、韓国の海外輸出比率3.03%(2010年)と比べても半分にも満たない状況です。

金額ベースでいうと、輸出番組の47%(2010年)がアニメです。なぜかというと、アニメのビジネスモデルが、ほかのテレビ番組とは異なるからです。アニメは、キャラクターを使った菓子、玩具など商品化やDVD販売など、放送以外の収入があってはじめて成り立つモデルです。ライセンス販売を前提に制作しているため、制作する時点で費用をかけて権利処理を終えているため、国内だけでなく海外での販売も、それほど大きな障害がなく進めることができたんです。

一方、アニメ以外の日本の地上波のテレビ番組は、フジテレビ、TBS、日本テレビなど放送局が制作費を全額出して制作し、広告収入で成り立っています。国内だけで完結できるマーケットがあり、できるだけ安い制作費で視聴率を獲得することに主眼を置いてきたため、海外販売で必要となる権利処理に費用を投じてきませんでした。

「日本のコンテンツ産業をGDPの10%へ」という国としての目標が掲げられて、ようやく取り組みを始めていますが、国内の市場規模が小さい韓国の勢いに押されているのが現状。まだまだ遅れています。

ドラマ輸出、最大のネックは音楽

――ドラマ輸出にネックはありますか?

最大のネックは、「音楽」でしょう。日本の音楽の著作権は強く守られているので、輸出先の国がドラマの主題歌は自国の歌手の歌に差し替えたいと思っても、許諾されないということが起こります。結果、ドラマ自体を買ってもらえないということになる。インターネット配信の権利処理も進んでいないので、プロモーション活動の一環として、Webサイトで出演者の写真を掲載したいという要望も、出演者側に拒否されるとそこでおわり。海外の買い手からすると、これほど使い勝手の悪いコンテンツはない、ということになります。

基本的には、日本の番組をそのまま放送して受け入れられるのはアニメくらいだろうというのが、海外の買い手の評価ですが、クイズ番組などの演出手法を販売し、海外でリメイクするフォーマット販売は現状売れています。

80年代に、欧州で日本アニメの放送時間が長くなり、視聴者の目に触れる機会が多くなったことで爆発的なヒットにつながったように、ドラマも海外での放送の機会を増やし、各国の視聴者の判断をあおぐことが先決だと思います。国民のメンタリティが近いアジアの場合、共同制作で同時放送という形態でのドラマ制作をもっと増やしてみてもいいのかもしれません。

アニメもここ数年、新しいヒット作が出ていないため安穏とはしていられません。「ワンピース」「名探偵コナン」「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」「ドラえもん」「NARUTO-ナルト-」「ポケットモンスター」など、海外で人気のキャラクターは10年選手ばかり。これらを超える新作が出てこないと、今後の拡大は見込めません。

中原 美絵子 フリーライター

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なかはら みえこ / Mieko Nakahara

金融業界を経て、2003年から2022年3月まで東洋経済新報社の契約記者として『会社四季報』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』等で執筆、編集。契約記者中は、放送、広告、音楽、スポーツアパレル業界など担当。

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