マツダが劣勢の北米に投じる「CX-9」の実力 クチコミを意識した生き残り戦略とは?

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もっとも、こうした戦略を取り北米市場専用車種としてCX-9を開発(北米以外での販売は行わないとマツダは断言している)、上向きのバイラルを狙う手法に特化しているのは、北米市場におけるマツダの難しい立場も表現しているのかもしれない。

あまり広くは知られていないが、マツダはグラスルーツ(草の根)モータースポーツのジャンルで55%という極めて高いシェアを誇っている(SCCA、スポーツ・カー・クラブ・オブ・アメリカ主催レースへのエントラントシェア)。そのために乗用車用としてはすでに使われていない13BロータリーやMZR型レシプロエンジンの供給も行っている。

草の根モータースポーツからステップアップし、より上位を目指して行くピラミッド構造のシステム全体のサポートも積極的で、モータースポーツが根付いた北米におけるマツダのブランド力向上に大きく寄与している。こうした活動と近年の車の質そのものの向上が、売り上げ規模に対して高いブランド価値を生み出している。

そんなマツダの課題は、高いブランド力、新世代製品で高めてきた商品力を販売へとつなげていくことだろう。フォードから独立してさほど年数を経ていないマツダが、北米での販売力を強化することは容易ではない。

「事業」としてのレース活動

しかし、それを自覚しているからこその、実用性能を高めて口コミ重視で評判を上げる戦略的な車の企画・設計、それにレース活動を通じたブランド戦略だ。マツダの北米におけるレース事業は、実はプラスマイナスがほぼないブレークイーブンで運営されており、マーケティングのために巨額投資を行っているわけではない。

小さな、しかし独自性のある自動車メーカーとしての戦い方のひとつとして、事業としてのレース活動もある。

そんなマツダが今年から開催しているのが、GLOBAL MX-5 CUPだ。今年は欧州、日本を含むアジアなどから若手ドライバーを招待してのレースとなったが、来年からは各地域でMX-5カップカーによるシリーズ戦が行われ、各地域を勝ち抜いたドライバーが米国カリフォルニア州にあるマツダ・レースウェイ・ラグナ・セカで決勝レースを行う。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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