マツダが劣勢の北米に投じる「CX-9」の実力

クチコミを意識した生き残り戦略とは?

3列シートを備え全長が5メートルを超えるCX-9は、日本では大型のSUVと分類されるだろう。何しろコンパクトクラスSUVのCX-5でさえ、日本では“大きめ”ととらえられる。大人気のCX-3……いわゆるBセグメントSUVともなると、北米では「SUV」と受け取られているかどうかも怪しい。

と話がそれかけたが、北米では過去10年でSUV市場が急伸。CX-5が属するコンパクトSUV市場は、2006年3月期は全体の5%に過ぎなかったのに対し、2016年3月期には14%、ミドルクラスSUVは4%から6%へと拡大した。

とりわけ富裕層に対して平均売価の高い車種を販売するならば、競争が激しい高級セダンではなく、メーカーとしての特徴を出しやすい高級ミドルクラスSUVに力を入れるほうが市場の開拓はしやすい。そこで、北米市場の顧客向けに、商品企画および評価を北米マツダで行ったのがCX-9だ。

「狙うのはカッコイイ、ママさん」と話したのは、CX-9の開発主査を務め北米マツダの副社長に就任したばかりの大塚正志氏。

「一昔前なら、北米で子どもたちをミニバンで送り迎えするシーンがよく見られた。しかし米国のファミリーカーはミニバンからSUVへと完全にトレンドがシフトしている。特に高所得世帯の主婦層は、3列シートのミドルクラスSUVを好む。主婦は車種選びにおいて“家族”を意識せざるをえない。しかし、ミニバンは“生活疲れ”を想起させる。そんな主婦層に対して、自尊心を満足させることができる高級感やデザイン、それにファミリーカーとしても使える利便性を備えた車種が求められている」

ホンモノ志向にとことんこだわった

どっしりとした台形を描くスタイル

内外装のデザインからサイズ感はもちろん、各種の細かな仕様から価格設定などに至るまで、あらゆる要素に北米マツダの米国人スタッフがかかわり、ホンモノ指向のゴージャスなライフスタイルを求める消費者層に訴える車としたという。

CX-9のライバルは価格帯から言えばインフィニティQX60あたりを意識したものだが、見据えているのは、BMWやアウディのミドルクラスSUVを好む消費者層だ。最高級グレードの「シグネチャー」には、さまざまなホンモノ素材を採用する。たとえば木に見えるパーツはすべてギター製作を手掛ける木工のプロが手仕上げ、アルミに見えるのはパーツもすべてアルミ製、革張り部分には高級なナッパレザーを採用。手で触れただけで違いがわかることにこだわった。

近年のマツダが採用する「鼓動デザイン」も、押し出しの強いマスクと伸びやかなサイドラインで、まるでコンセプトカーのような骨太のスタイルと、どっしりとした台形を描く存在感を主張する北米市場向けにカスタマイズされている。

確かにデザインや質感は、高級なSUVに慣れた富裕層からも注目を集めそうだが、しかし彼らの基本的な訴求点は、やはり走りの部分にあった。

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