なぜ「ギョーカイ美女」には未婚者が多いのか テレビ局勤務、2人の39歳女性に起きたこと

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「私に媚びてくるADもいましたよ。出世したら頼むね、みたいに。でも、私はやっつけられるほうが多かった。“ブス、ブス”って。これって慣れたらどうってことないようで、意外とチクチクくる。特に演者の前で言われたりするのが嫌でしたねえ。あるとき腹を抱えて笑っていた女のモデルがいた。だから、私がプロデューサーになったとき、そいつを干したんです(笑)」

こうまで厳しい境遇にあって、辞めようとは思わなかったのだろうか。

「もちろん、何度もあります。何度も泣きましたねえ。でも、それで辞めたくないっていう根性が頭をもたげるんですよ。ええ、体育会系の難点ってやつで(笑)」

また、過酷な状況は、人間を客観視させるのかもしれない。

「そうなると、なんで自分が制作に配属されたのかも、なんとなくわかるわけでね。自分で言うのもなんですけど、国立出てますからぶっちゃけバカじゃないし、体育会系だから根性はある。しかし顔がブス。愛想もよくなかったと思う。そんな女が広報とか秘書課なんか行けるわけないんで(笑)」

愚問であることは承知のうえで、就職初年度に戻りたいか聞いてみた。

「……あのねえ(苦笑)」

それで十分だった。

「エリート美女」のA子と「雑草女」のB子。同じ年の同じ放送局に就職した2人の女性だが、配属先も含め、こうまで天国と地獄の差が開いたのは、容姿の差が大きい。

「美人が得をする」

「そうでない人は損をする」

それはテレビ局に限らず、社会全体の構造であるといっていい。

若い俳優を「いつかどうにかしてやろう」

「2年目も同じ、3年目も同じ。ちょっと不倫とかにはまって面倒なこともあったけど、それはそれで別にいいかって……」(A子)

「変わらずひたすら仕事。でも仕事を覚えたら、罵倒は減った。それに制作会社のADはずっといるとはかぎらないし。でも、華やかなことなんか全然ない。恋愛? ないない。でも、若い俳優の男の子とか見たら、“いつかどうにかしてやろう”と思った。オッサンだよね」(B子)

しかし、20代中盤を超えて、28歳ごろになったとき、2人を取り巻く環境は、突然変化してくるのだ。

まず「雑草女」のB子のほうだが、相変わらず仕事過多の日々の中で、地位が上昇する。役職が付くのである。

AD(アシスタント・ディレクター)から、D(ディレクター)に昇格して一人立ちしたうえに、半ばP(プロデューサー)的な立ち位置で、出演交渉やギャランティの折衝を行うようになる。奴隷のような毎日からは解放されるのだ。

AD時代に自分をいじめた制作会社のADを切ったりと、合法的な意趣返しに喜びを感じるのもこの時期のことである。とはいえ、天変地異といえるほどの変化があるわけではない。

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