死んでたまるか! 日本の電機 2013年、電機の最終的な浮沈が懸かっている

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“日の丸DRAM”のまさに象徴が、この広島工場だった。しかし、円高と壊滅的な価格下落に見舞われ、エルピーダは台湾子会社の工場に生産シフトを進めていく。広島はモバイル用に特化するなど試行錯誤を続けたが焼け石に水。その存在価値に疑問を呈する声も上がった。

「この1年間で起きた為替変動の大きさは、一企業の努力ではカバーし切れない」。倒産会見で坂本幸雄社長はこう釈明した。当時は1ドル=80円を切り、厳しい国際競争を強いられていた。さらにパソコン用DRAMも、主力の2ギガビット品が1個1ドルを下回り採算割れが常態化していた。

円安で風向きは変わった

それからわずか1年後、風向きが変わった。1ドル=97円まで円安が進み、DRAM単価は1.74ドル(3月末時点)に上昇。広島で生産しても、十分に利益が出る。

米調査会社IHSグローバルの南川明・主席アナリストは、「DRAM需給は決してよくないが、価格が下がらない。局面が完全に変わった」と指摘する。マイクロンがエルピーダを買収することで、DRAMは世界3強体制に集約された。10年前には15社で繰り広げられていた過当競争も一段落したといえそうだ。

エルピーダのシェアは13.5%(12年末時点)で、経営破綻直後からほぼ横ばい。倒産から1年以上が過ぎたが、この間、人員削減などは一度も行われていない。買収側のマイクロンも、雇用を維持する意向を表明している。ただ、今回の復活は持続的なものというには、まだ頼りない状況だ。

兵庫県尼崎市。そびえ立つ三つの棟はまだ真新しい。プラズマ世界一を目指してパナソニックが第1(05年)、第2(07年)、第3(09年)と立て続けに竣工させたプラズマパネルの巨大工場である。

前々任の中村邦夫社長がプラズマへの巨額投資を決断したのは03年。次の大坪文雄社長も拡大路線を引継いだ。プラズマへの投資総額は5000億円を超える。

00年代半ばの時点で、プラズマ敗戦は確実とみられていた。液晶テレビの品質が格段に向上し、しかも安く造れるようになってきたからだ。

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