SNS世界2位 フェイスブックついに日本見参
開始からわずか4年で世界2位のユーザー数を誇るSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にのし上がった米フェイスブックが、19日から日本語版サービスを始めた。今年に入り、ドイツ語やフランス語など欧州言語を中心に多言語化を積極化しており、日本は8カ国語目となる。
初来日した創業者のマーク・ザッカーバーグCEOは弱冠24歳。ハーバード大学在学中、大学生同士の情報共有を目的に2004年にサイトを立ち上げたことがその始まりだ。サービスは全米の大学で急速に普及、06年からユーザー登録を一般向けに公開したことで拡大に拍車がかかった。今やアクティブユーザー数は約7000万人、その3分の2は米国外のユーザーで占められている。
同社は06年にマイクロソフトと広告業務で提携。その直後、米ヤフーが10億ドルで買収検討との報道もされた。昨年にはマイクロソフトがフェイスブック株の1・6%を2・4億ドルで取得。出資の前提となる企業価値が、実に150億ドルにも上ると算出されたわけだ。そうしたことから、実力と今後の展開に注目度が高まっている。
実名公表の情報共有
ザッカーバーグ氏は「(サービス開始が)たまたま大学発だっただけ。友達といろいろな情報を共有したいというのは、普遍的な要求ではないかと思っている」と日本での展開にも自信をのぞかせる。
フェイスブックの特徴で、最大の差別化要因は、「実名登録」での利用を推奨している点。「実名を公開すれば、ほかの人からも見つけられやすく、互いの情報をより共有できる。偽名だと公開情報も偽りとみられ、おのずと情報の輪からも外れていく」(ザッカーバーグ氏)と話す。
一方、ユーザー数が2億人を超す世界最大のSNSである米マイスペースは、一足先に06年から日本語版を開始。エンターテインメントに特化しており、ミュージシャンやクリエーターの登録が多い。マイスペース日本法人の大蘿淳司社長は「実名のほうがいいサービス形態もあるかもしれない。ただ、われわれのSNSはイベント会場のようなもの。ユーザー同士の会話が楽しければよく、ニックネームで呼び合っても構わない」と戦っている土俵が異なることを強調する。
フェイスブックがネットで現実の人間関係を再現し、個人情報の開示範囲を設定できる点などで、むしろ日本最大のSNS・ミクシィと共通項が多い。サービス開始は同じく4年前。ミクシィのユーザー登録数は1400万人を突破、20代の半分以上が登録しており、国内で圧倒的な地位を確立している。先行者としての強みで「ミクシィはネット上でのインフラに近づいており、拡大余地はある。登録3000万人も不可能な数字ではない」(ミクシィの小泉文明経営管理本部長)。
会見でザッカーバーグ氏は広告が大きな収益源とするのみで、具体的な数字を明かさなかった。海外メディアによると07年の売り上げは約1・5億ドル程度。対して、ユーザー規模で大きく劣るにもかかわらず、ミクシィは広告収入で約90億円を稼ぎ出す。また、携帯電話のデータ通信速度向上を受け、昨年は携帯電話経由の閲覧数がパソコン経由を逆転した。フェイスブックが新たな土壌を築くうえでも、携帯ユーザーの取り込みが課題になってくる。
日本のネット広告市場はラジオと雑誌を抜き、テレビ、新聞に次ぐ規模。その取り込みはフェイスブックの成長にとっても原動力として欠かせないはず。実名公開での情報共有に日本ユーザーがどれだけ利用価値を見いだすのか。世界2位企業にとって、日本市場は試金石となる。
(井下健悟 =週刊東洋経済)
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