筋肉に身を捧げた男たちの「マッチョ生活」 筋トレは裏切らない

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古川さんはマスターズ現役選手のために練習場を無償提供しており、1回500円で一般の人にも開放。入会した筋トレ歴ゼロの中高年の中には、彼らの気概に奮い立たされるのか、本格的にウェートリフティングを始め、試合に出場する人もいる。

ジムは社会貢献産業

筋トレの聖地といえば、世界30カ国に展開する「ゴールドジム」。「THINKフィットネス」代表取締役の手塚栄司さんが、海外に出店計画がなかったゴールドジムに掛け合い、1995年、日本第1号店を、東京・南砂町に開いた。

「過去にあまりいいイメージではなかったマッチョという言葉は使わないでもらいたい」

手塚さんから最初にぴしゃり。「筋トレ」という言葉にも疑問を感じるという。手塚さんが考えるフィットネスとは「ちょうどいいこと」。運動、栄養、休養のバランスが取れ、ちょうどいい健康的な生活習慣が、その人にとってのフィットネスだ。

「かつてフィットネスは余暇産業と考えられていましたが、そうではなく、健康的な生活習慣を浸透させる社会貢献産業なのです」(手塚さん)

確かに、筋肉道を突き進む人がいる一方で、「ちょうどいいこと」として楽しむ人が増えている。それを裏付けるのが、新感覚のフィットネスの出現だ。

「ホットヨガ」ブームをつくった「ベンチャーバンク」代表取締役会長の鷲見貴彦さんは、「体を鍛えるという感覚ではない。ストレス発散だったり、最新の音楽で体を動かしたいといったニーズに応じてフィットネスを提供している」と言う。

鷲見さんが4年前にニューヨークから“輸入”した「フィールサイクル」を体験した。ミラーボールがきらめくクラブのような暗闇で、ヒップホップやレゲエなど大音量の音楽を聴きながらフィットネスバイクでノンストップエクササイズ。45分間で最大800キロカロリーの消費量というだけあって、髪を振り乱した終了時には頭は真っ白、全身水をかぶったような汗、しかし気分は爽快! 「二つのスタジオを掛け持ちする利用者もいる」という話に納得。

「筋肉をめぐる冒険」を経て感じたのは、フィットネスの形は多様化しているものの、一朝一夕で筋骨隆々の体は作れないという当然の事実だった。

(ライター・羽根田真智)

※AERA 2016年9月26日号

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