黒田日銀総裁の大ギャンブル 脱出が困難な大規模国債購入策

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FRBが重視しているインフレ指標であるPCE(個人消費支出)価格指数の前年比は、10年11月に1.4%まで低下し、11年9月に2.9%へ上昇した。それをバーナンキ議長らFRB幹部は「金融政策の効果だ」と自画自賛したが、最近では1.3%まで低下している(エネルギー・食品を除いたコア指数も、一時期より大幅に低下している)。

つまり、将来的にはわからないが、中央銀行が大胆な資産購入を実施しても、インフレ率がなかなか上がらないことがある。しかも米国ではREITやジャンクボンド、シンジケート・レバレッジ・ローン、中西部の農地価格などでFRB理事ですら警戒を表すほどのブームの過熱が起きており、金融政策のバランスのとり方が非常に難しくなってきている。

大量の国債購入を続ける弊害

今後、政府が発行する国債の7割を日銀が買い取るという政策を続けていると、債券市場は市場参加者の見方を映し出す「価格発見機能」が著しく低下し、金利裁定が働きにくい市場になっていくおそれがある。

これまで、銀行、証券会社、機関投資家は財務省と一緒になって大量の発行を受け止められるような日本の国債市場・レポ市場を構築してきた。日本の中央銀行は今、それを崩壊させようとしている。ひとたび市場機能が壊れると、短期的に回復させることは難しくなるだけに、ますます日銀はその政策から脱出しにくくなるおそれがある。

日銀の国債大量購入が政府・議会に感覚麻痺を起こし、それが「ニューノーマル」と見なされるようになると、なお危険だ。世界経済が上向きの間は大丈夫だと思われるが、もし米国を中心に失速感が強まり、日本経済の先行きの楽観論が剥げ落ちるようなことになるとどうか。

政府・与党の中から「市場では日銀の国債買いオペで国債が足りないと言われているのだから、もっと国債を発行してもよいのではないか」という意見が台頭するかもしれない。後世の人々が歴史を振り返った時、今回の日銀の国債購入増額が日本の金融政策のフィスカル・ドミナンス(財政支配)の契機となったと評価されることがないように警戒する必要がある。 

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