「米9月利上げはない」と本当に言い切れるか FRBの過保護政策と日銀過信相場の終わり
21世紀に入り、日米欧の中央銀行は「市場との対話」「フォワードガイダンス(中央銀行が将来の金融政策の方針を前もって表明すること)」という耳障りのいい言葉を使って、市場にカンニングを許すという「過保護政策」を続けてきた。その結果、今では「FRBはいつでも市場の味方」という誤った認識が市場に蔓延し、FRBの金融政策を難しくしてしまっている。
こうした「過保護政策」を、FRBがどのように考えるかも重要だ。もし、イエレンFRB議長を筆頭にFRBの高官達が、繰り返し利上げの警鐘を鳴らしたにもかかわらず市場が利上げを織り込まない状況をリスクだと感じているとしたら、今回は「市場にお灸をすえる」いい機会だと考えても不思議なことではない。
幸いなことに、中国リスクや英国のEU離脱ショックなどによる金融市場への悪影響は限定的になっているほか、2016年に入って新興国の株式市場は先進国を上回る上昇を記録しており、市場にお灸をすえやすい市場環境になっている。
重要なことは、FRBは「金利の正常化」と「準備預金の正常化」という「2つの正常化」を目指しており、「二つの正常化」のうち、「金利の正常化」を先に進めると明言していることだ。
「過保護に育てた市場」にショックを与えることを避けるために「過保護政策」を続けるか、「過保護に育てた市場」にショックを与えても「自立する市場」を求めるか。FRBは厳しい選択に迫られているのかもしれない。
市場の厳しい目にさらされる日銀
FRBが厳しい選択を迫られる可能性がある一方、日銀は市場の厳しい目にさらされる可能性がある。
今月20-21日の日銀金融政策決定会合で「総括的な検証」を約束したことで、市場では日銀がさらなる金融緩和が打ち出すという期待が高まっている。
確かに9月の金融政策決定会合で、日銀が何かしら「緩和策と言えるような策」を打ち出すことは十分に考えられる。しかし、そのもとになる「総括的な検証」の内容に関しては失望を与える可能性が高い。なぜか。
「日本銀行は、2013年4月に『量的・質的金融緩和』を導入しました。その後3年余りの間、わが国の経済・物価情勢は大きく改善し、デフレではないという状況になりました。一方で、これだけ大規模な金融緩和を行っても2%の『物価安定の目標』は実現できていません。この間に金融政策がどのよう に機能し、何が2%の実現を阻害したのか、この点が検証の第1のポイントです」(9月5日付日銀公表「金融緩和政策の『総括的な検証』」)
7月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)が5カ月連続で前年比マイナスを記録し、異次元の金融緩和直前の2013年3月以来、3年4カ月ぶりの下げ幅となった中、日銀は依然として「わが国の経済・物価情勢は大きく改善し、デフレではないという状況」という。これは、市場とは異なる認識だ。
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