ユーロ体制は簡単には崩壊しない
中野 私は、少なくともドイツがユーロを見捨てるようなことはしないと思いますよ。もし、ドイツがユーロを見限ったら、それこそほかの欧州諸国、あるいは全世界から、「ドイツは自分のところさえよければ、それでいいのか」という批判を浴びることになります。ドイツに対する信頼感を失うことになりますよ。それって、グローバルな相互依存関係が強まっている昨今の国際情勢から考えると、ドイツにとって非常によろしくない。だから、私はユーロ体制の崩壊はありえないと考えています。ちょっと楽観的かな?
渋澤 いや、僕もユーロ体制そのものは、そう簡単に崩壊しないと思っているよ。ただ、おそらくユーロの参加基準を満たせない国は、どんどん脱落していくでしょう。なので、最終的に残った国によって、強いユーロが新たに創られると思う。
中野 それは同じ意見ですね。何が何でもユーロにとどまらなければならないというものではなく、参加基準を満たせないような場合は、一時的にユーロから離脱できるという選択肢があったほうがいいでしょう。
藤野 あとは、財政統合まで持っていけるかどうかということですね。これは正直、非常にハードルが高い。本当に、戦争でも起こって、すべてが滅茶苦茶な状態になって初めて、「それじゃ、財政統合と政治統合を検討しましょうか」、ということになるんじゃないかな。
渋澤 同意。
中野 ただ今回、キプロス問題が浮上したけれども、この手の問題に対する抵抗力は、ある程度、できていると思います。ユーロ加盟国が財政危機に陥ったとき、金融支援を行うESM(欧州安定メカニズム)や、欧州中央銀行が南欧諸国の国債を直接買い入れるOMTなど、流動性を確保するセーフティネットが構築されていますから、それらに対する信認があるかぎり、ユーロ危機の再燃は防げるでしょう。
渋澤 ただ、構造的な問題はなかなか解決しない。特に欧州は福祉国家だから、各国とも財政負担が重くなる。これは日本も同じだよね。結局、財政問題を解決するには、福祉予算を削らなければならない。それは非常に難しいことだと思うけど、政治的にそれを解決する可能性を模索する必要があるよね。ESMやOMTは、確かにマーケットの安定につながってはいるけれども、いずれも一時しのぎにすぎない。だから、この手のセーフティネットに対してマーケットの信認が維持されているうちに、福祉予算をどうするのかという大きな課題に取り組む必要がある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら