東急の大開発で若者の街シブヤはこう変わる 100年に1度の再開発、苦悩するIT企業

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成長して外部へ移転したIT企業を数えるよりも、渋谷に残るITの大企業を数えたほうが早いだろう。GMOインターネット、サイバーエージェント、DeNA、ミクシィなどが該当するが、これらの企業も一段と成長すれば渋谷で増床がかなうかは、わからない。

グーグル、アマゾンなどの外資も日本事業の拡大に伴って渋谷から退出した。一時、六本木ヒルズなどにIT企業がごっそり引き抜かれたことも記憶に残る。成長性があり、人材獲得に必要な対価としてオフィス賃料も惜しまないIT企業は、不動産業界にとって垂涎のテナントだ。

若者の街「シブヤ」は存続できるか

再開発後の渋谷駅周辺の予想図。ランドマークとなる高さ230mの駅街区ビルを筆頭に、巨大ビルがそびえ立つ(画像提供:渋谷駅前エリアマネジメント協議会)

東急グループにとって、LINEの誘致に成功した「渋谷ヒカリエ」は、そうした流れへの反撃ののろしともいうべきビルだった。再開発により、数年後には東急グループの4街区全体で約22万平方メートルのオフィス賃貸面積が生まれる予定だ。

「渋谷ヒカリエ」の1フロア当たりの賃貸面積が約2200平方メートルなので、ざっとその100フロア分の広さになる。LINEは「先のことは何とも言えませんが、そのころにまたオフィスの狭さに悩まされているくらい、当社が成長できれば理想」と語る。

東京オリンピックの頃には、渋谷は空を見上げればオフィスビルが林立する街に生まれ変わる。ただ一方で、それは「シブヤ」なのかという、漠とした不安も感じずにはいられない。都市で働くビジネスパーソンならば、古い飲食店街がきれいに再開発され、心休まる行き場を失った経験を持つ人も多いだろう。

渋谷の再開発に当てはめるならば、若者の街「シブヤ」が失われてしまうのはよいこととは思えない。流行に敏感な人たちが集まるリアルマーケットがすぐそこにあることは、渋谷のオフィスに入居する企業にとっても重要な価値だ。再開発を進める関係者も、いまの渋谷の街の熱を冷まさないことに非常に腐心している。そのために、渋谷の都市空間を上下に分けて、上を大人向けの渋谷、下を若者向けの渋谷にするという大胆な構想を練っている。

大人向けとは、オフィスのほか、たとえば落ち着いたレストランやラウンジ、劇場などを指す。渋谷駅周辺再開発では、動線の改良のため、各ビルをつなぐ歩行者デッキを地上4階レベルで東西南北に張りめぐらせる計画だ。渋谷の雑踏が苦手という人は、大人エリアだけを通って移動することも可能になる。

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