東電福島原発の汚染水処理が「破綻寸前」 タンク増設間に合わず、信頼性欠く施設で保管継続

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「タンクに移し替えるのは困難」と語る尾野本部長代理

8日夕刻の記者会見で、東電の尾野昌之・原子力・立地本部長代理は「すべての汚染水を(地下貯水槽と比べて安全性が高いとされる)鋼鉄製タンクに移し替えるには物理的にタンクの容量がまったく足りない」と発言。「漏洩の原因を見極めつつ、時間的経過の中で最終的な保管形態を考えたい」と、深刻な台所事情を明らかにした。

地下貯水槽に含まれる放射性物質の濃度はきわめて高い。「タービン建屋内の滞留水の半分程度」(尾野本部長代理)という厳重な管理を要する汚染レベルだ。しかし東電には、安全性に難のある施設を使い続けること以外に打つ手が残されていない。

タンク増設が間に合わない恐れも

東電は大規模停電を端緒とした重大事故の続発を踏まえて、7日付けで廣瀬直己社長を本部長とした「福島第一信頼度向上緊急対策本部」を設置。「土木・建築設備対策チーム」「電気設備対策チーム」など4つのチームを編成した。このうちの「汚染水対策チーム」では、「2013年度上期に増設を予定している12.6万トン分を初めとしたタンクの設置を前倒しする」ことを最大の目標としているが、毎日400トンのペースで増え続ける汚染水の収容が間に合う保障はない。

原発事故発生から2年余りにして、東電は最大の危機に直面している。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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