ローソンのカット野菜、急成長の秘密 “弱点”払拭で、販売が一気に4倍

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もう一つは、“割高”感の払拭である。

「ローソンセレクト」の「キャベツ千切り」は、キャベツL玉が可食(芯などを除いた食べられる)部分の3分の1~4分の1が入って1袋98円。富士食品工業と年間を通じて契約を結び、一定価格で調達している。

青果の価格は原則として需要と供給のバランスで決まるため、豊作で安いときにはキャベツ1玉が200円程度で購入できる。その場合、カット野菜は確かに割高だ。ところが、近年は厳冬などを背景に葉物野菜の価格がしばしば高騰。キャベツ1玉が400円近くになることもある。安定したカット野菜の価格が、ここで奏功してくるのである。

食べきりサイズをむしろ評価する購買層も

「もったいない」意識の強い高齢者や主婦、単身世帯などには、むしろ「食べきりサイズ」で、かつ単価が100円程度に抑えられていることが支持される場合もある。「カット野菜のような簡便的な野菜は、コンビニで置くからこそ(スーパーなどと)差別化できる」と、均一価格が特徴の「ローソンストア100」を展開する九九プラスの福田正太郎・商品物流本部生鮮部部長は語る。というのも、簡易調味料や弁当と同時に購入される頻度が高く、客単価の引き上げに寄与する商品だからだ。

生鮮食品は、加工食品などと比べて利益率が低く、品質の劣化も早いため、取り扱いをためらう、フランチャイズチェーン(FC)加盟店もあったが、「加盟店オーナーも納得して店に(生鮮食品を)並べるようになった」(九九プラスの福田氏)という。

ローソンは12年10月、「生鮮コンビニ宣言」を打ち出し、生鮮食品の品ぞろえを拡大することで、60歳以上の高齢者や働く女性の取り込みに動き出した。先行して商品力を大幅に高めたカット野菜は、牽引車となりそうだ。

商品が持っている弱点にこそ、ヒットのヒントがある。ローソンのカット野菜からは、そんなセオリーが感じ取れる。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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