石破茂氏、「寄らば大樹という言葉は嫌いだ」 本当のことを言わなければ政治家ではない
石破:総理というのは、狙ってなれるようなものではありません。しかし、いつの日か安倍政権も交代する時が来ます。自民党として、その時への準備、あるいはそれ以降への準備をしておかなければいけません。10回連続当選、閣僚6年、党役員4年を務めたということは、それだけ責任が重いということでもあると思っています。
総理を目指そうが目指すまいが、決めるのは党員です。そして総理でなくとも、「重鎮」と言われ影響力を発揮するというあり方もあるでしょう。しかし、この国の未来のために、自らが先頭に立ってやらなければならないという時が仮に来た時に、「準備不足」ということは許されない、との強い気持ちがあります。総理でなければ変えることができないことがこの国に多いということは、初めにも申し上げたとおりです。
今後、総裁選に立候補することになれば、2008年(首相になった麻生氏を含め5人が立候補)、2012年(総裁→総選挙後首相になった安倍氏を含め5人が立候補)に続いて私にとっては3回目になります。
1回目は、勝てないことを覚悟しての立候補でした。2回目は民主党政権がひどすぎる中で、国民の中にも自民党への期待がもう一度醸成され、政策論争とともに「政権奪還」との勢いが重視されました。
3回目があるなら、その時には政策集団「水月会」を中心にして政策体系を完成させ、批判にもきちんと答え、多くの有権者を納得させるだけの実行力を持てるように備えなければならない。このためにはどんなに短くても2年は必要ではないか、と思っています。
自民を積極支持する有権者は決して多くない
有馬:7月の参議院選挙では、自民党は56議席(改選数121議席)を獲得しました。公明党が14議席を獲得するなどしたため、安倍内閣が勝敗ラインに設定した「与党での改選過半数61」を大きく超え、参議院でも「いわゆる改憲勢力で3分の2超」が実現しました。しかし、自民党だけで見ると、石破さんが幹事長をしていた3年前の参議院選挙の議席数65と比べると見劣りします。自民党としては本当に大勝だったのでしょうか。
石破:今回、私が選挙演説に入った場所は東北地方や新潟、長野などでしたが、残念ながらほとんど勝つことができませんでした。マスコミも「与党圧勝」という報道が主体でしたが、実際は圧勝とは言い難いと思います。私個人の感想としては、敗北感が強かった。
実は、2009年に自民党が敗れ野党になった時、野村克也さん(元東北楽天ゴールデンイーグルス名誉監督)を講師としてお招きしたことがあります。そのとき野村さんは「負けに不思議な負けなし。敗因を分析せず反省しなければ、いつまでも負け続ける」とおっしゃられました。あのとき反省したからこそ、今日の自民党があるわけですが、私自身は今も危機感を持っています。
そもそも自民党が与党に復帰した時でも、私は積極的に支持している有権者はさほど多くなかった、と考えています。小選挙区制によって、与党の得票率は4割程度でも7割の議席を有することになります。そこに投票率をかければ、積極的な支持はもっと低くなる。そうした恐ろしさを忘れてはいけない。
今回においても、候補者の選び方、選挙の手法、応援の方法など、常に反省しなければいけません。確かに安倍内閣の支持率は高い。しかし、自民党が与党に復帰した時のある種の「期待」や「ワクワク感」がいつまでも続くと甘えてはいけない。
有馬:それでも、国民は、「民進党を中心とした野党よりもまだマシ」と思っている、ということでしょうか。
石破:そうですね。今回の選挙では、民進党の岡田克也党首が、「消費税の再増税はしない。財源不足については赤字国債も検討する」といったのが致命的でした。これは6年前(野党時代の自民党の消費増税10%への引き上げに、与党だった民主党が乗った)とまったく逆で非常に興味深かったのですが、選挙を戦う身とすれば、「われわれは経済成長で財源を手当てします。しかし、民進党は次世代にツケを回そうとしています」と簡単に批判できてしまいました。
しかし、「経済成長とは何ですか?その中身は?」と問い詰められたら、果たしてどれだけ実のある話を答えられたか。街頭演説では、そこまで求められなかったのです。
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