料理を引き立てる「スゴい塩」、納得の共通点 能登半島とニューファンドランドで見た極意
北大西洋岸のニューファンドランドにあるフォーゴ・アイランド・インのティモシー・チャールズ氏は、貴重な収穫物を手のひらに載せて、見せてくれた。
この塩は、同ホテル滞在中にパンと一緒に小さなカップに入れて出されたバターにかけられていた。その香りは私に、14年間使い続けている日本の「珠洲(すず)塩」を思い出させた。チャールズ氏はホテルのキッチンに小さな製塩所を持っているのだと教えてくれた。
良い塩は料理を完璧にする
適度な塩分を摂り、良質な塩を選ぶことは、健康な生活には欠かせない。塩、私の場合は海塩は、キッチンで使う成分として最も重要かつ頻繁なものだ。適度な塩分がなければ最高の味付けは不可能だ。大量の日差しを浴びて熟した家宝のようなトマトは、良い塩をひと振りすれば、深くて神々しい香りを放つ。
昔ながらの製法で絞り出されたオリーブ油と新しく絞られたレモン汁から作られた、非常にベーシックなドレッシングには優れた塩が絶対に必要となる。それは他の成分と同様に、決定的なことだ。
薄く塩をかけられた生魚の切り身の表面からは脂の香りがにじみ出る。そして塩は魚の筋肉を引き締める。いずれの要素も、美味しい焼き魚を作る鍵になる。私は野菜炒めを作る際、中華鍋に野菜と香草、そしてひとつかみの塩を加える。それ以上の香りは不要だ。塩は料理を完璧なものにしてくれる。
私が使う「珠洲塩」は石川県の能登半島で作られる。ベーシックな日用品で、職人が作る高品質な塩だ。他の塩よりもミネラル分を多く含み、酸味や甘さ、塩辛さ、引き締まった度合いのバランスが取れている。塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、そして僅かな金属分の組み合わせが、こうした香りを生み出してくれる。
良い塩というものは過度に塩辛くはなく、混じり合った味がして香り立っている。そして最も重要なのは、このミネラル分豊富な海塩が健康に良いことだ。