北朝鮮「5度目の核実験」は何を意味するのか 今年いっぱいは軍事力を誇示する可能性

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2012年に金正恩政権が本格化して以降、北朝鮮は「経済建設と核武力建設の並進路線」を打ち出した。これは第一に、これまで停滞を続けてきた国内経済の活性化に注力するために、国家予算の中で大きな割合を占めてきた国防費について選択と集中を行う、というものだ。国防費を絶対的な抑止力となる核兵器などの開発に集中させ、それ以外の国防関連予算を経済建設に回す。そうすることで経済状況の改善を目指す方針という意味で理解されてきた。

2000年代半ばから北朝鮮に対しては国際的な経済制裁が加えられ、2016年1月の核実験で再度強化されながらも、緩やかな経済成長を続けている北朝鮮にとっては、自らの主張通りのことをやっているに過ぎない、と強弁するだろう。

最高指導者である金・朝鮮労働党委員長は、2016年1月の4回目の核実験以降、核武力強化による成果をあらゆる段階で拡大するとの方針を立てた。また、今年5月の第7回党大会では「責任ある核保有国」という点を強調しながら、金委員長は「侵略的な敵対勢力が核でわれわれの自主権を侵害しないかぎり、最初に核武器を使用しない。核拡散防止条約(NPT)を誠実に履行する」とも述べている。

これは、「核拡散はしないが核は保有する」ということだ。北朝鮮側からすれば、圧倒的な軍事力を持つ米国と敵対関係にある以上はそれに対抗するために核が必要である、という論理である。今年は特にそういった軍事力の発展強化に注力するというのが、金委員長が打ち出した「核武力建設」だった。

2016年内は”危険な火遊び”が続く

韓国や米国などの経済制裁の効果を骨抜きにするために核実験やミサイル発射実験を繰り返す、という論理には一理ある。だが、北朝鮮にとって軍事力を誇示する相手は、まずは国内だ。厳しい国際情勢のなかでも、北朝鮮は党と政府が従来から主張している通りの政策を忠実に実施していると言いがたい。その不満を抑えること、いわば国民向けの体制強化・引き締めが主目的であることは間違いない。

「核保有国」との立場で最大の敵である米国と交渉しようとするのが北朝鮮の姿勢。この姿勢が変わることはないだろう。今年11月の米国大統領選挙を軸として、北朝鮮は少なくとも今年いっぱい、日本や韓国などの周辺諸国を巻きこみながら、軍事力強化とその成果を見せようとし続ける可能性が高い。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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