深刻な台風被害でJR北海道経営はどうなる? 復旧優先か、それとも廃線論議が加速するか
まず石北本線については、10月中旬に仮復旧ということなので一安心だが、問題は根室本線だ。被災区間が石勝線経由の特急が多数通る上落合信号場から芽室という交通の要衝にあたっているために、現時点では札幌と釧路を結ぶ「スーパーおおぞら」と、札幌と帯広を結ぶ「スーパーとかち」が全面運休に追い込まれている。
このため、並行して走っている道東自動車道(2011年10月開通)は寸断されている国道の迂回路という意味もあって一部を無料(全区間の通過車両は除く)として、利用者に利便性を提供している。また、東は阿寒町まで伸びているこの高速道を使った長距離路線バスには予約が殺到しているという。
では、このまま利用客の多くは鉄道を見捨てて自動車とバスに移行するのであろうか、仮にそうであるならば道央から道東への流動を担う鉄道の重要性は、この被災を契機として見直されて行っていいのだろうか?
台風の被災前に発表された「持続可能性」への「悲鳴」と重ねあわせて考えると、JR北海道は新幹線の成功と札幌圏の通勤通学需要や空港アクセスなどに「集中」すべきであって、衰退しつつある地方都市との流動は高速道路に委ねて行くべきなのだろうか?
そう簡単には言えない。
豪雪時に頼れるのは鉄道だ
問題は、冬季の運行体制の問題だ。確かに鉄道に加えて、国と北海道は高速道路網と空港整備を行ってきた。鉄道の衰退はその結果というのは事実だ。だが、それはあくまで春から秋の話である。冬季になると、人々の言うことは「手のひらを返したように」なる。要するに「JRさまさま」なのだ。低気圧が通れば吹雪となり、そうなれば空港は閉鎖、高速も通行止めになる。そして、「釧路―札幌」の「特急スーパーおおぞら」はスシ詰めの満員ということになるのだ。
空港にしても、高速道路にしても「除雪したらいいではないか」という声もあるだろう。だが、零下10度あるいは20度以下の暴風が吹く中で、一晩に1メートルの粉雪が吹き溜まる環境では、融雪機構などは全部凍りつくわけで、本州の豪雪地帯とは過酷度が全く異なる。だが、鉄道だけは130年の歴史が蓄積したノウハウで、余程のことがなければ「動かす」ことができている。
新千歳が吹雪で閉鎖になってもほとんどニュースにならないが、JRが運休を出すとすぐに報じられるのは、マスコミがJRに意地悪をしているのではない。そのぐらい、冬季の空港閉鎖は当たり前であって、その反対にJRの大規模運休は珍しいからだ。
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