「国連の機能を補完する小規模な会合の必要性」ハーバード大学教授 ジョセフ・S・ナイ

アメリカの次期大統領がブッシュ政権の教訓として学ぶべきことは、多国間主義の重要性である。
 
 今世界が直面している気候変動、疫病、金融不安、テロといった問題は、大国でさえ単独では対応できない深刻なものばかりである。そうした状況で、アメリカだけが覇権主義や一国主義を主張しても意味はない。複雑な問題の解決には、何より各国の協力が不可欠といえる。
 
 そこで国際的な合意を形成し、問題解決に導く主導的な役割を期待されているのが、国連である。しかし国連は、組織の肥大化や硬直性、形式的な外交手続き、煩わしい官僚主義などが、加盟国の合意形成を阻害していると非難されている。いかに加盟国全体に参加意識を持たせ、行動へとつなげるか。それは国際機関に共通する課題なのである。
 
 国連のそうした課題を克服するためには、地域レベルと世界レベルとで非公式な諮問機関を設置し、国連の機能を補完してはどうだろうか。たとえば1970年代、石油ショック後の金融危機の際に、フランス政府は先進5カ国の指導者を招集して会議を開いた。それは5カ国程度の規模なら、参加国の代表者をランブイエ城の図書館に集められるというのが理由だった。
 
 しかし、こうした会議は往々にして肥大化しがちだ。実際に5カ国の会議も、やがて“G7”に拡大し、ロシアが加わり“G8”となった。最近ではオブザーバーとしてさらに5カ国が招待され、実質的には“G13”になっている。
 
 会議は肥大化すると、問題が生じやすい。たとえば新しく招待された国は、会議の予定や討論の内容を決める権限が与えられず、異議を申し立ててくる。また会議自体も、各国の首脳に加え、何百人もの官僚が随行するほど巨大化してしまう。そうすると非公式であった会議も参加者が多数となり、迅速な合意形成がしにくくなるのだ。

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