中卒で性転換者、台湾「異例の新閣僚」の正体 35歳の天才・唐鳳氏の素顔とは?
唐氏の両親はともに新聞記者出身。本人のIQ(知能指数)は180と天才級だ。8歳からコンピュータプログラミングに関心を持っていたことは有名な話。同年齢の子どもより早熟で、能力も早く向上したため、かえって学校の授業についていけなかったという。
唐氏の両親と同僚だったある記者は「子どもの時から唐氏はほかの子どもとの差が大きく、いじめにも遭っていた。学校に適応できず、当時の教育体制ではこれほどの天才を受容できなかった。そのため、両親も学校に頼らない独学による教育を研究し、『自分で勉強する』という子どもの言い分を支持した」と語る。
アップルのコンサルタントだったことも
結局、唐氏は14歳の時に中学校を離れ、独学を選択した。中学校は実際には卒業できず、高等学校と大学にも入学できなかった。
だが、天才はやはり天才。1990年代半ばからコンピュータを独学してきた唐氏は、わずか16歳で起業し、プログラミング言語「Perl(パール)」など世界的に使われているオープンソースのプラグラミング言語の発展に寄与したことで、IT産業では誰もが注目する天才として認められた。その後、台湾内外のIT企業の顧問として活動し、米アップル社のコンサルタントとしても働いている。
唐氏は、産業界にのみ関心があったわけではない。彼の最大の関心事の一つは、政府と情報のあり方だ。政府が持つ情報に誰もがアクセスできるようにした「開かれた政府」(open government)は、彼の実績のひとつだ。台湾では長期間、政府の情報に対する透明性が高くなかった。政府の情報に普通の国民がアクセスすることが難しく、政府がどのような政策をどう推進・執行するのかを、国民がきちんと監督するには厳しい状況だった。
これを是正するため、唐氏は台湾のIT関係者とともに、デジタル技術で法律や予算、経済統計、政策報告書、聴聞会の中継・録画・記録、公務員の海外出張内訳、国会議員の質疑内容など各種資料を整理したうえで「見える化」をして、インターネットで公開し続けてきた。彼らが作った「開かれた政府」のウェブサイトを通じて、国民は各種情報を閲覧できるようになった。政府の情報を透明化し、見やすく整理された資料を提供することで、国民が政策について討論する土台をつくり、台湾における民主主義の発展に大きく貢献したと評価されている。
唐氏は2005年に性転換手術を受けた。両親は息子が娘になるという選択に反対せず、むしろ応援した。当時、唐氏の母親は「彼がそうしたいと言うのなら、同意しない理由がない」と述べ、父親も「性転換して今より幸せになれるのなら、妻と一緒に支持する」と応援してくれたという。唐氏自身も「過去、現在、そして未来に、皆さんが私に女性的な呼び方で呼んでくれれば嬉しい」と明らかにしている。