昨年、「巨額の不正会計」で大きく揺れた東芝は31位の88件。2014年度の情報のため、問題発覚前の数字だが、第三者委員会から「少ない」と指摘された2013年度の61件よりは若干増えている。この件数が多いか少ないかの判断は正直難しいが、従業員数との対比がひとつの方法として考えられる。
同社の2014年度の単独従業員数は3万5278人で件数88で割ると400.9。約400人に1人が通報した計算になる。2013年度は589.2人だったので通報は増えている。
他の会社はどうか。製造業を中心に見ていくと6位のIHIは単独従業員数8458人で1件当たりでは35.5人。従業員35.5人に1人が通報しており、東芝と比べると10倍以上の通報実績だ。
9位アイシン精機は同じく59.9人、11位パナソニック(200件)同256.5人、17位ホンダ(142件)同161.6人といずれも東芝より通報は活発だ。
一方、28位のトヨタ自動車(101件)は同671.4人、54位三菱電機(50件)は同608.7人など数値が東芝を上回る(通報が少ない)会社もある。だが、全体的に見ると東芝の通報件数は少ないといえそうだ。
もっとも単独従業員数を基準にすることには問題も多い。通報ができる対象者はグループ会社を含む場合もあるし、正社員以外のパートやアルバイトが含まれることもある。通報可能な人数が明確でないため、単独の従業員数を使った数字はあくまでも参考データのひとつとして見ていただきたい。
「100人に1人が通報する」は一つの目安
こうした注意点を前提に上位100社の通報1件当たりの従業員数を見ると100人未満が53社、200人未満は83社だった。これを見る限りでは「100人に1人が通報する」という状態が通報件数のひとつの目安になる可能性がありそうだ。
実際の内部通報では窓口に「上司や同僚の批判など個人的な不満をぶちまける」ケースも少なくないと聞く。同一の通報者の度重なる連絡で対応に疲れた窓口担当者がメンタル面で問題を生じるといったケースもあるようだ。
しかし、それでも少しでも気になることを自由に発言できる環境を整備することで、本当の問題点が浮かび上がってくる確率は高くなる。よりよい仕組みを目指して適切な利用を従業員と一緒に考えながら進めていくべきだろう。
内部通報件数の適正値は現状では正直よくわからない。ただし、長い期間データを集めていけば、規模や業種によっての傾向が出てくるはずだ。そうするとガバナンスの評価項目として重要な役目を果たすことになるだろう。今年の2016年調査(対象は2015年度、2014年度)で通報件数は5年分のデータが集まる。そろそろ詳細な検討をしていく時期かもしれない。
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