「3つの傲慢」が日本のFinTech普及を阻む 大手金融機関がベンチャーに見限られる日

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特に、米国の全人口の約40%を占め、これからの米国経済を担う世代と目されているミレニアル世代(1980~2000年に生まれた若い世代)は、既存の金融機関に厳しい。

「現在利用している銀行よりも、グーグル、アマゾン、アップル、ペイパル、スクエアが提供する金融サービスの方がワクワクする」が回答者の73%。「テクノロジー・スタートアップが銀行のやり方を全面的に見直してくれることを期待する」が50%。さらに「銀行はいずれまったく必要なくなる」が33%。ミレニアル世代の考え方・行動様式を詳細に調査した報告書「The Millennial Disruption Index」が伝える数字である。

一方、グーグルやアップルが金融サービスをまだ本格的には展開しておらず、金融危機の影響をさほど受けていない日本の金融機関がフィンテックを推進するのはなぜなのか。

日本の場合は、イオンや楽天など流通業を中心とする異業種からの金融サービスへの参入や、「LINE Pay」のように若年層に浸透しているネットサービスを起点とした金融サービスの広がりが既存の大手金融機関にとっての脅威となっている。

「LINE Pay」では、「LINE」の友だち同士であれば、相手の口座番号を知らなくても無料で送金ができる。また、最近では、送金だけでなく、ECサイトやリアル店舗における決済にも進出しており、既存の金融機関にとっては、今後の行方が気になるところであろう。

さらに、ビットコインのように中央機関を必要としない仮想通貨とそのインフラであるブロックチェーンが、自分たちにとってどういった影響があるのかを見極める必要も出てきた。

そして、最も大きいのが、金融庁の前のめりな姿勢である。金融庁は金融審議会に設置した「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」や「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」を通じて、フィンテックに対する対応を検討してきた。そして、この検討結果を受けて、今年5月には銀行法の改正にまでこぎ着けた。ここまでくると、もはや後戻りはできない。

金融庁配下にある金融機関は、金融庁を「手ぶらで帰らせるわけにはいかない」状況にあり、何としてもフィンテックで具体的な成果をあげる必要がある。その手段として、大手金融機関が躍起になっているのが、フィンテック関連、あるいは人工知能などの新技術に強いスタートアップ企業との協業や出資などの「オープンイノベーション」である。

大手金融機関にありがちな「3つの傲慢」

大手金融機関は社会的な信用・信頼があり、大きな顧客基盤を抱える一方で、革新的な金融サービスのアイデアや技術を持っていない。反対に、スタートアップ企業は革新的なアイデアや技術はあるが、信用は未知数であり、顧客基盤に乏しい。この結果、金融機関は、フィンテック推進のため、ベンチャー企業との提携や出資など、両者にとってWin-Winとなるであろう「オープンイノベーション」へと舵を切っていくことになる。

しかし、これまで付き合いのなかったスタートアップ企業とのオープンイノベーションを成功に導くのは、簡単なことではない。大手金融機関にありがちで、成功の妨げになる、次の「3つの傲慢」に陥らないよう留意する必要がある。

(1)スタートアップ企業を「業者」扱いする

大手金融機関である自分たちは売り上げ(経常収益)数兆円。かたや、相手は設立間もなく、売り上げもほとんどないスタートアップ。だからといって、金融機関の立場が上ということはない。

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