余裕?無謀?「Jリーグに2000億円」の皮算用 試合中継で巨額投資を回収できるのか

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――ダ・ゾーンにはどれだけの人材がかかわっているのか。

フルタイムで300人強がロンドン、東京、ミュンヘン、ベルリンで働いている。当社はグローバルなスポーツメディアに特化した世界最大級の会社なので、その人材も生かしている。放送エンジニア、マーケティング、コマーシャルなどだ。

日本オフィスにあるコントロールルームには複数の大型ディスプレイが並ぶ

外部のアイデアも取り込んでいる。たとえば、ロンドンで働くチーフプロダクトオフィサーは英BBC出身で、ネット視聴サービス「BBC iPlayer」を手掛けた。マーケティング担当者は米ネットフリックス出身で欧州展開を担当していた。NHKで20年以上プロデューサーを務めた社員もいる。

――スポーツの放映権料は世界的に高騰している。懸念はないか。

上昇しているのは、むしろいいことだ。放映権料の高騰はスポーツメディア業界が伸び、競争が起きているということ。われわれも、オープンな市場を歓迎している。

――今後、放映権料がさらに高騰しても、それ以上に会員を獲得することでビジネスを成り立たせていくということか。

そうだ。サービスが伸びていく中で、さらに国内外の放映権を獲得し続ける予定だ。なるべく多くのスポーツを提供したい。

「2000億円は回収できる」

――Jリーグに2017年から10年間、合計2000億円もの資金を投じる。業界関係者からは「高すぎる。絶対にペイしない」との声があるが、回収できるのか。

ベリーベリーベリー、自信がある。ダ・ゾーンのサービスを1年や2年ではなく、3年、4年、5年と提供し続けていくことで、投資したおカネを上回るリターンを得られると確信している。

日本への投資は長期的な視点で見ている。Jリーグのパートナーとしてサッカーファンを増やし、スポーツのメリットについて教育し、スタジアムの体験をすばらしいものにする。こうした取り組みがすぐに収入に結び付くとは思わないが、スポーツを楽しむ人が増え、サッカーを見る人も増えて、スタジアムに行く人も増えれば、ダ・ゾーンの会員も増える。

ジェームズ・ラシュトン(James Rushton)/ダ・ゾーン事業のCEO。1978年生まれ。2003年にパフォームグループに入社。各地域のマネージングディレクターを務めてきた

――放送だけの取り組みではないということか。

10年間にわたる投資だし、互いの戦略を支援し合う必要がある。Jリーグにはクラブのコミュニティがある。各クラブと直接協力してファンたちと接することができるようにする。

放送についても、質を向上させる取り組みをしている。Jリーグのファンは、来シーズンになったらきっと驚くだろう。「こんなにも質が上がるのか」と。

――これだけのおカネを出せるパフォームグループ(ダ・ゾーンを展開する英国企業)は、何で儲けているのか。

大きなスポーツメディアビジネスの会社で、主に第三者へのコンテンツ配信や広告収入で利益を出している。ダ・ゾーンは利益の高いグループの事業だから、こうした取り組みができる。

(撮影:梅谷秀司)

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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