エイベックスがダメ会社にならない道がある 松浦社長「ギリギリを攻めていきたい」

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松浦:組んでやるのはいいですが、丸投げはダメです。結局、自社でシステムも作れないと駄目なんです。外注で済むレベルのものは別にいいんですけど、重要な部分は中で作っていく必要がある。その大事さっていうのが、AWAをやってみてわかった。エンジニアが細かい事まで本当に毎日直していく、外注を使っていると毎日直すっていう発想はないですから。

AWAで感じたのは、そのサービスに愛を持っていないとできないってことです。したがって自社のエンジニアを育成していくことは重要です。外から引っ張ってくるだけでは無理です。音楽の事もよく分かっているようなエンジニアを育てていきたい。そのためには、教育するしかないんです。その教育はもう始めています。

山田:『ポケモンGO』ってゲームじゃないといえばゲームじゃないですよね。要するにスタンプラリーのようなものです。これからはゲーム的なものって重要になると思うんです。そこはエイベックスが得意な部分かもしれない。

松浦:かつてリズムもののゲームってあったじゃないですか。自分たちでやればよかったよね、というものもたくさんある。儲かっているからやる、今ごろになってやるというのは正直言って嫌なんですが、『ポケモンGO』が一発出るとあんなになるんですよ。やっぱり無視できない魅力はありますよね。

山田:2500億円という目標を達成するうえで、おカネを消費者からもらうのではなく、企業からもらう、という広告系のビジネスはどう考えていますか。

広告ビジネスによる収入は重要

松浦:それも考えています。昔からCDジャケットを広告スペースにして売るとか、そういうことをやってきましたから。でも配信している音楽の間に広告を挟むというのはどうかなあ。Spotify(スポティファイ)には音声で広告が入っていますが、英語だといいんですが日本語だとどうなんだろうとか。ただ映像の場合はできますよね。

「きちんとおカネが入ってくる仕組みがなければ、音楽は全部、素人がさっと作ってYouTubeにあげればいいというものになってしまう」(撮影:今井 康一)

広告ビジネスということでは、細かくやるのではなく、アーティストを丸ごと飲料メーカーなどにスポンサーしてもらう、といった形のほうがいいかもしれない。結局この業界は、スポンサーって重要じゃないですか。伝統芸能をみればわかりますが、支えてくれる人がいなければ継続できない。音楽にもそんな危機が訪れている。ですから、そこはスポンサーの仕組みが重要になると思います。

きちんとおカネが入ってくる仕組みがなければ、音楽は全部、素人がさっと作ってYouTubeにあげればいいというものになってしまう。収入が少ないのでプロの作詞家とか作曲家になりたい人は減っていき、みんなゲーム作りたいってなる。そうなると才能が枯渇して、音楽をちゃんと作る人がいなくなるのではないかという心配もしています。

山田:「量は質に転化する」という言葉がありますが、お客さんがいっぱい集まればおカネが動くので、結果的に質がよくなるようにも思います。例えば、アマゾンがビデオをやった当初、「たいしたことはできないだろう」という見方が多かったですが、視聴者がいておカネがあると、そこにアーティストが集まってくる。結果としてオリジナル番組の質がかなり高くなっています。

松浦:あとはそれが継続できるかっていうところでしょう。一発ドーンっていうのはあるかもしれませんが、続けていくことが重要なんです。

しかし、アマゾンのような会社も、いずれは継続させるための仕組みづくりにも力を入れ始めるでしょう。そうなると、そうした会社においしいところを握られてしまう。そうならないためにも、エイベックスは大きく変わらなければいけないと思います。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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