日本ペイント買収劇、“白紙撤回"の先 提案取り下げたシンガポール社との関係、攻守交代へ

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日本ペイントはもともと買収防衛策を導入(10年5月に公表)しており、20%以上の議決権を獲得しようとする買い付け者が表れた場合、取締役会での決議を経て、既存株主のうち買い付け者以外に新株予約権の権利行使をさせることができる。追加情報の要請は、買収防衛策を導入している企業が通常、取るべき経路をたどったにすぎない。

日本ペイントとウットラムは、現在もアジアの合弁事業について話し合うために月1回の決議の場を設けている。2月末にも両社のトップが顔を交えたが、その際、ウットラム側から「日本ペイントと争うのは本意ではない」との話があったという。3月に入り、再度、協力関係を深化させることで合意。ウットラムが買収提案を白紙撤回することとなった。

50年続く協業関係

日本ペイントとウットラムとの協業関係は、1962年にシンガポールでの販売に関する提携を始めたことが出発点だ。それから50年、両者は中国、タイなどアジア各国で合弁事業を展開し、日本ペイントが技術と生産、ウットラムが販売を担うことで息を合わせ、着実に塗料市場での存在感を増してきた。現在では中国やマレーシア、シンガポールなどの市場ではシェアトップを誇る。

日本ペイントがアジアで存在感を示すことができたのは「ウットラムの手腕によるところが大きい」と関係者は打ち明ける。たとえば、いたずらに現地法人を作るのではなく、パキスタン進出にはマレーシアの現地法人を生かす。一方、中国では遠回りのようでも各省に現地法人を設立するなど、地域の特性に合わせた展開が可能になったのも各地の華僑人脈を駆使できるウットラムのトップ、ゴー・ハップ・ジン代表なればこそ、というわけだ。

だが、ゴー氏が議決権の45%を握り、日本ペイントを実質支配下に収めることになっていたら、話は違ってくる。

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