DIC、ソーダ味アイスの青色を生む「藻」の技術 後発のM&A巧者が勝ち取った世界トップの座

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だが、M&Aの勝者は、苦しくても持ち続け、買収後のマネジメントをうまく進めた者。DICも例外ではなく、現在、全社売上高8000億円規模の約半分を占める、主力の印刷用インキ事業を支えているのはサンケミカルだ(セグメント表記は「米州・欧州」)。2015年12月期は印刷用インキ売上高の67%、同営業利益の55%(105億円)をサンケミカルが稼ぐ。

今期は円高が響くが、それでも同売上高の64%、同営業利益の49%(88億円)を担う(会社計画)。会社全体の営業利益で見ても、約2割がサンケミカルからもたらされている。初期投資は大きかったが、完全にお釣りが来た格好だ。

グローバルスペックの要請に応えられる

約840億円で買収した米国サンケミカルの本社

インキメーカーが全世界に市場を持つことは、地域リスクを分散化できることのほかにも重要なメリットがある。近年の国境を超えたM&Aの増加により、さまざまな分野でグローバル企業の存在感が増している。こうした企業は自社製品にグローバルスペックを持っており、それへの対応を取引先に求める。インキメーカーに対してなら、このグローバル製品のラベルの青はどこへ行ってもこの色味、と。DICはサンケミカルを持っているため、こうした要請に容易に応えられるのだ。

もちろん、グローバル化が進めば、為替という自助努力ではいかんともしがたい不確定要素の影響が大きくなる。実際、8月9日に発表された2016年12月期第2四半期(1~6月)決算では、円高と原料安による製品価格下落を理由に、売上高は計画比23億円未達だった。ところが、営業利益は計画を10億円あまり超過した。その理由は、グローバル化と並ぶDICのもう一つの特徴、多角化にある。

一般に化学メーカーは主力製品の周辺分野へと裾野を広げていく傾向が強い。が、DICは、主力のインキとは異なる分野でも多角化を進めた。先進国でのデジタル化の進展に伴う印刷用インキの需要減を見越していたからだ。インキ派生では、ライバルも遅かれ早かれ追随できる。DICの面白いところは早くから川下指向、つまりより消費者に近い製品を目指したことだ。

たとえば、健康食品の食用藻スピルリナ。米国では、「緑色の健康食品といえばスピルリナ」といわれるくらい認知度が高く、多くのスーパーマーケットで販売されている。キウイなど緑色のジュースに混ぜるほか、アイスクリームのカラーリングにも使われる。

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