ヒラリーを大統領に導く「超重要人物」とは 米大統領選まで雇用統計が堅調な理由

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この頃、オバマ政権内で経済面を仕切ったのがジーン・スパーリング氏。氏はルービンやサマーズ、ガイトナーなどの財務長官経験者と並ぶビル・クリントン政権を支えた中枢の人物だ。そしてオバマ大統領の再選の過程では、「就任時より失業率を悪化させ、再選された大統領はいない」というジンクスの中、2012年の11月に向けて失業率はどんどん改善していった。

そのままついに同年10月発表分ではオバマ大統領の就任時を下回ると、「雇用者数の増加がないのに失業率だけが改善するのはおかしい」として、元GE会長のジャック・ウェルチ氏など、共和党系の大物たちが一斉にオバマ政権の「企み」をメディアで訴えた。

だがスパーリング氏はこの局面も乗り切り、同年11月の大統領選でオバマの再選を成し遂げると、一昨年の2014年には政権を退いた。そして今は、ヒラリー・クリントンの経済面での選挙戦略を仕切っている。

大統領選挙まで米雇用統計の堅調が続く

筆者はこの時の経験から、11月の大統領選挙まで、米国の雇用統計は堅調な数字が続くと予想する。経済の実態はどうでもいい。オバマ政権はヒラリーへ「バトン」を渡すため、ありとあらゆる手段を使うはずだ。よって好調な雇用の数字でも、中央銀行関係者の利上げトークは限定されるはず。結果、株価もある程度は維持される。

その際中央銀行が利上げをしない理由としては、弱いGDPと見掛けはインフレをいえばよい。イエレン議長がその気になれば、利上げをしない理由はいくらでもある。

そして“剛腕”スパーリング氏を擁するヒラリーに対し、トランプはやっと経済面でのアドバイザー陣15人を発表した。誰がスパーリング氏の対抗馬としてのリーダーか、現時点ではわらないが、民主党系のコメントからは、「4年生の大学以上で経済を学んだ人は2人しかない」という嘲笑が聞こえた。

確かに、オバマ政権を囲んだブルッキングス系の知性に慣れてしまうと、 個人的にも思わず噴き出すような顔ぶれだ。ただしKKRのファインバーグ氏やリーマンショックで大もうけしたポールソン氏の名前からは、ヒラリーと民主党が社会的知性を(wisdom of crowd)を前面に出しているのに対し、トランプは強烈な個性による現状打開(brilliance of great)を強調している。

恐らく日本のような成熟社会では、クリントン側が正論に思えてしまうだろう。だが、アメリカではまだまだコントラリアン(逆張り派)=トランプ側が勝つ素地は残っている。大統領選はますます興味深い。

滝澤 伯文 CME・CBOTストラテジスト

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たきざわ おさふみ / Osahumi Takizawa

アメリカ・シカゴ在住。1988年日興證券入社後、1993年日興インターナショナルシカゴ、1997年日興インターナショナルNY本社勤務。その後、1999年米国CITIグループNY本社へ転籍。傘下のソロモンスミスバーニーシカゴに転勤。CBOTの会員に復帰。2002年CITI退社後、オコーナー社、FORTIS(現在のABNアムロ)、HFT最大手Knight証券を経て現在はWEDBUSH傘下で、米国の金融市場、ならびに米国の政治動向を日系大手金融機関と大手ヘッジファンドに提供。市場商品での専門は、米国債先物・オプション 米株先物 VIXなど、シカゴの先物市場商品全般。

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