欧州人のハンパない、歴史と伝統の"売り方" コンセプトだけで売る、それくらいの力がほしい

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手塚健介さん(29)がロンドンビジネススクール(LBS)に留学して以来、現在に至るまで、一貫して取り組んでいるのが、ヨーロッパのブランドマーケティングを学ぶこと。2012年4月に始まったブランドマネジメントの授業は、手塚さんのマーケティングへの考え方を変えた授業だという。

「日本のメーカーで働いていたときは、技術ありき、モノありき、のマーケティングが当たり前だと思っていました。ところが、ヨーロッパでは、ブランドマーケティングは、まず『コンセプトありき』です。僕のマーケティングへの考え方を大きく変えてくれた授業です。」

ロンドンビジネススクール
英国ロンドンにある経営大学院で、国立ロンドン大学カレッジの1校。1966年創立。 英Financial Timesの世界MBAランキングではトップ5の常連校。ヨーロッパ以外からの留学生の比率が約60%と、国際性に富んだ学生構成が特徴。卒業生の3割が金融、3割がコンサルティング、3割が事業会社へと就職する。
(日本語ウェブサイト) 

さて、前述のキャシャレルのCMに戻ると、少女が受けている風は、「少女の内面世界」を表しているのだそう。

授業でこのCMが取り上げられたのは、キャシャレルのブランド再生を象徴しているからだ。

フランスの化粧品会社、ロレアルグループの1ブランドであるキャシャレルは、1980年代後半からヨーロッパの香水マーケットを席巻していた。顧客をティーンエイジャーなど、若者層に絞ったことが成功の秘訣だった。

ところが1990年代に入ると、ほかの競合ブランドに押されて勢いを失い、売り上げが激減。90年代後半には、ブランドを再生させる必要性に迫られていた。

当時、流行っていたカルバン・クラインのようなセクシーなユニセックス路線に変更するのか、それとも、少女路線で行くのか。徹底的に検討したのは、コンセプトをどうするかということだった。

ヨーロッパのMBAだからこそ学べるブランド論がある(後列左から2人目が手塚さん)

キャシャレルは、主たるターゲットであるティーンエイジャーに向けた「少女路線」に回帰することを選択し、売り上げはV字回復した。

このCMは、その原点回帰を象徴しているのだという。流行の「セクシーさ」は取り入れているが、風によって少女らしさを保ち、セクシーさが全面に出ないようにしている。

手塚さんによれば、キャシャレルは「市場に合わせつつ、ブランドアイデンティティを守ったことで成功した」のだそうだ。

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