「黒田新総裁」誕生でも、4月は円高ドル安に? 市場動向を読む(為替)

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ただし、その間、FRBや日銀の量的緩和がまったく無意味だったわけでもなさそうだ。たとえば、ドル円が過去8年間強い相関を示した日米2年金利差に基づく推計値を求め、その推計値のドル円の上振れ・下振れ幅を日米ベースマネー倍率と対比させると、両者には一定の相関が確認できる。

つまり、日米金利差で説明できないドル円相場の値動きを、日米ベースマネー倍率である程度説明することは可能だ。

日米のベースマネーの差も無意味ではない

FRBが量的緩和に踏み切った2009年以降、ドル円相場は、より大胆に量的緩和を断行してきたFRBのバランスシートの拡大度合いを見ながら、ドル安円高で推移してきた格好である。当然、その間、需給面でドル円相場を円高に推移させる牽引役になったのは、ヘッジファンドを始めとした短期投資家であった。

ところが、足元では、市場は、FRBについては金融緩和の巻き戻しを始めるのではないかと疑念を持ち始め、一方、日銀は安倍政権の発足により、従来以上に大胆な金融緩和に踏み切るだろうとの、思惑を強めている。こうした中で、ヘッジファンドなどの投資戦略は、従来の円買い主導から円売り主導へと完全に変貌。昨年11月以降の急速な円安の牽引役となった。

もっとも、今のところは、日銀は資産買入等基金を今年1年間で36兆円増額させる計画である一方、FRBも当面は月々850億ドルの資産買入れでバランスシートの拡張を図る公算が高い。このままでは、日米ベースマネー倍率はむしろドル安円高を示唆する方向へ変化していくのである。

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