締め切りの約束を守らない外国人の「本音」 「イエス」と言いながら実は「ノー」な人たち
会話の中での「コンテキスト」のレベルにも、文化的な違いが表れる。米国人である私は、「低コンテキスト」のコミュニケーションを行う。つまり、何かを成し遂げたいと思ったら、はっきりと直接的に言う。一方で、アジアなど「高コンテキスト」の文化では、コミュニケーションはもっと複雑だ。たとえば、たった今「イエス」と言った同僚が本当はあなたに賛成していないということを認識するには、ボディランゲージや他の手掛かりを読み取らなければならない。
文化的差異の中で、非常に対処しにくいものの一つが時間の概念の違いだ。私はオバマ政権下の財務省で、国際問題の広報担当官として仕事をしていた。政府の高官とともにアフリカのある国家元首に会いに行ったときのこと、予定されていた会談の場に赴くと、大統領は来ていなかった。私の上司であったその高官は激怒した。なぜなら、米国など「モノクロニック」な文化では、時間に正確であること、締め切りは守ることが期待されるからだ。しかし、サハラ砂漠以南のアフリカや中南米など「ポリクロニック」な文化では、計画はそれほど確定的なものではなく、常に変更が行われる。
異なる文化における社会的な期待を理解することも重要だ。たとえば、チリの大手広報会社の幹部によると、ある組織がチリに存在し業務を行う場合、それがどのように「ミセス・フアニータ」のメリットとなるのか、チリの市民は説明を受けることを期待するという。なお、ミセス・フアニータは現地の言葉で、一般的な市民を指す。
低賃金のジャーナリストが期待するかもしれない「茶色の封筒」に関してだが、それを回避する方法の一つは、イベントや記者会見などで食事を提供することだ。交通手段を提供することも考えられる。トーゴの議会で演説を行う米政府高官に同行した際、現地の米国大使館のコミュニケーション担当官は、首都のロメを車で走り回り、演説に出席する記者たちを車に乗せていった。そうしなければ、彼らの大多数は演説を聞きに来ないのだ。
影響力のある人物をつかむ
各地のコミュニティにおける社会的な期待を理解するには、現地で影響力を持つ人と親しくなるとよい。米国で影響力のある人というと、映画スターやメディアの有名人を思い浮かべがちだが、ほかの国々ではイマーム(イスラム教の指導者)かもしれないし、その街で人気の若者、あるいは村長かもしれない。
マレーシアの広報会社のトップから聞いた話では、マレーシアの地域社会で仕事をする場合、彼は「ジャムアン」と呼ばれる宴会を開き、現地のレストランでの夕食に10人ほどの村人を招待するという。食事をご馳走してもらう替わりに、村人たちは彼の質問に答え、どうすれば彼のクライアントである電気通信会社を現地でうまく宣伝できるか教えてくれる。もし、その影響力を持つ人々があなたの話を広めてくれたら、あなたは現地で信頼を獲得できる。世界の都市から遠く離れた農村部では、これが最も効果的な(かつ、ときには唯一の)コミュニケーション・チャネルなのだ。
同様の目標を達成しようとしていても、文化が異なると目標達成の道筋はさまざまに異なる。私はこのことを実際に経験し、専門家からも話を聞いてきた。だから、いま私が国連やほかのクライアントと仕事をする場合、私はもう同僚に締め切りを守ることを求めない。その代わりに、何であれば可能なのか、彼らの文化や国ではどうすれば最も上手く行くと思うか、尋ねることにしている。
(執筆:広報コンサルタント Kara Alaimo、翻訳:東方雅美)
© 2016 New York Times News Service
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