中選挙区制の罪深さ、育てるべきは政党だ

ノスタルジーを捨て、今考えるべきこと

政治腐敗一掃を目指し、小選挙区制の導入へ

小選挙区制は、1994年、当時の「政治改革」の結果として導入された。背景には、それまでの中選挙区制に対する強い批判があった。

最も重視されたのは、中選挙区制が金権政治、すなわち選挙のための汚職・腐敗を招くという批判である。この問題に火をつけたのは、特に80年代末のリクルート事件だった。

中選挙区研究の一つの到達点。中選挙区で議員が当選するメカニズムと、それに基づく議員行動に ついて分析されている(建林正彦、『議員行動の政治経済学』、2004年、有斐閣)

中選挙区制が政治腐敗に結びつく根本的な理由は、一つの政党が過半数を得ようとすると、選挙区内で複数の候補者を当選させなくてはならないことである。所属政党からの全面的な協力を見込むことができない候補者は、当選のための資源を政党以外に依存することになる。それが、政治腐敗の原因になるのだ。

政党を頼ることができない候補者がまず依存するのは、選挙区内のさまざまな組織・団体だ。たとえば定数4人程度の選挙区では、20%程度の得票を固めれば当選が見込めるので、一定の組織・団体からの支持が当選に直結する。

所属政党を問わない競争のもと、候補者は自分だけを支持してくれる組織・団体を探す。その結果、選挙区内の地域ごと・産業セクターごとに細分化された組織・団体が、政党ではなく候補者個人を支援する。

当選した議員たちは、支援の見返りとして組織・団体への便宜を図ることを優先し、それが政治腐敗の温床となるのだ。

次に候補者が依存するのは、自民党で隠然たる力を持っていた「派閥」だ。自民党の派閥は、党の支援に頼れない候補者に、経済的な資源をもたらし、場合によっては選挙区の組織・団体の紹介をも行っていた。

派閥の長は、自民党総裁選挙に勝利して総理大臣になるべく、構成員にさまざまな資源を付与して求心力を高めようとするのだ。この過程で政治腐敗が生じることになる。

小選挙区制では、各政党が一つの選挙区にただ一人の候補者を立てる。一人しか当選できないから、特定の組織・団体の支持だけでは当選が覚束なくなり、組織されていない有権者からの支持も必要になる。結果として候補者は特定の組織・団体や派閥に頼ることなく、政党に依存して当選を目指すようになると期待されたのである。

「経験不足の新人」が、政党の名前に頼って当選することは、むしろ小選挙区制の導入で期待された効果だ。これをもって小選挙区制を否定することは、残念ながら歴史に学ばない態度と言わざるを得ない。

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